訪問介護と外国人材の現在地|解禁から1年で見えてきた課題と展望
2025年4月に外国人材の訪問介護への従事が解禁されて、1年以上が経過しました。
解禁当初は「人手不足が深刻な訪問介護の分野に、新たな担い手が加わる」という期待の声もありました。
しかし解禁から1年以上が経った現在、訪問介護の分野で外国人材の活用が大きく広がっているかと言えば、必ずしもそうとは言い切れない状況にあります。
施設に併設された訪問介護事業所では一定のニーズが見られる一方で、居宅訪問介護の分野では受け入れが進んでいないという現場の声が聞こえてきます。
本コラムでは訪問介護における外国人材の活用について、解禁から1年で見えてきた課題と今後の展望を整理します。
解禁後の現状
外国人材の訪問介護への従事が認められてから、現場ではどのような変化が起きているのでしょうか。
施設の形態による受け入れ状況の違いを中心に、解禁後の現状を確認します。
施設併設型と居宅訪問介護では状況が異なる
訪問介護と一口に言っても、そのサービス提供の形は大きく二つに分かれます。
一つは介護施設に併設された訪問介護事業所が、隣接する施設の利用者に対してサービスを提供するケースです。
もう一つは居宅訪問介護で、ヘルパーが利用者の自宅を訪問してサービスを提供します。
訪問介護は介護分野の中でも特に人手不足が深刻な領域であり、外国人材の参入によって状況が改善されることへの期待は高いものでした。
しかし解禁から1年が経過した現在、その受け入れ状況には大きな差が生じています。
施設併設型の訪問介護については、外国人材の受け入れが比較的進んでいます。
施設内に教育体制が整っていることが多く、外国人材に対する業務上のフォローも行いやすい環境があるためと考えられます。
すでに施設型の介護業務で経験を積んでいる外国人材であれば、同じ施設に併設された訪問介護事業所の業務にも対応しやすく、何か困ったことがあった時にも施設内の職員に相談しやすい環境があるという点も、受け入れやすさにつながっています。
一方で居宅訪問介護については、解禁から1年以上が経過しても受け入れがそれほど広がっていないのが現状です。
居宅訪問介護で受け入れが進みにくい背景
居宅訪問介護で受け入れが進みにくい背景には、大きく分けて以下の二つの要因が考えられます。
体制面の課題

居宅訪問介護の事業所は、総じて小規模で少人数の体制で運営されているところが多い傾向にあります。
外国人材を一人受け入れた場合、その人に対して業務を教えたり日常的にフォローする体制を整える必要がありますが、少人数の事業所ではそうした教育体制を確保すること自体が難しいケースが少なくありません。
居宅訪問介護では利用者の自宅に一人で訪問する場面が多いため、施設型の介護とは求められる対応力が異なります。
緊急時の判断や利用者のご家族とのコミュニケーションなど、一人で対応しなければならない場面が多いことも、受け入れのハードルを高くしている要因の一つです。
こうした事情から、居宅訪問介護の事業所側としても「受け入れたい気持ちはあるが、今の体制では難しい」という判断になりやすい状況にあります。
手続き面の課題
体制面の課題に加えて、手続き面でもハードルが存在します。
外国人材が訪問介護に従事するためには、本人に一定の実務経験が求められるだけではなく、受け入れる事業所側にも要件が設けられています。
事業所は評議会の認定を受ける必要があり、認定に必要な書類の量も多いため、事業所にとってはその準備が大きな負担になることがあります。
実際に手続きを進めた結果、当初想定していた入職時期に間に合わなかったというケースも発生しています。
解禁から1年以上が経過した現在でも、手続きにかかる期間は短縮されてきてはいるものの、スムーズに進められるとは言い難い状況が続いています。
日常業務と並行して認定に必要な書類を準備することは容易ではなく、手続きの進め方に不慣れな事業所にとっては「何をどの順番で進めれば良いのかが分からない」という状態になることもあります。
人材会社や登録支援機関から、手続きの流れについて具体的な説明を受けることで、負担感は軽減されますが、それでも施設型と比べると事業所側に求められる準備の量は多いのが実情です。
今後の展望
現時点では課題が多い状況ではありますが、将来的に状況が変わる可能性もあります。
育成就労制度を経た人材の参入

今後の展望として注目されるのが、育成就労制度との関連です。
育成就労制度は特定技能に移行する前の準備期間として位置づけられており、この期間中に施設型の介護事業所で実務経験を積んだ人材が、特定技能に移行した段階で訪問介護に従事するという流れが想定されています。
日本での生活経験と介護の実務経験を持った人材が、訪問介護に入る機会が増えれば、現在の状況とは異なる環境が生まれる可能性があります。
日本語でのコミュニケーション力や、介護現場での対応力をすでに備えた人材であれば、居宅訪問介護の現場でも活躍しやすくなると考えられます。
さらに育成就労の期間中に介護の実務経験を積むことで、介護福祉士国家試験の受験要件を満たす人材が育つことも考えられます。
介護福祉士の資格を取得すれば、特定技能とは異なる在留資格で訪問介護に従事できるようになるため、より安定した形での人材確保につながる可能性もあります。
現時点では不確定な要素が多い
ただし育成就労制度は2027年に始動予定であり、実際に制度が稼働してから状況がどのように変化するのかは、現時点では見通しが立ちにくい部分があります。
制度の設計通りに人材が育成されて訪問介護の分野に移行していくのか、それとも別の課題が生じるのかは、制度が実際に運用されてみなければ分からない部分が多いのが実情です。
そのため現時点では育成就労制度に過度な期待を寄せるのではなく、まずは既存の制度の中でできることを着実に進めていくという姿勢が求められるでしょう。
訪問介護の分野に外国人材が本格的に参入するためには、受け入れ体制の整備、手続きの簡素化、そして実務経験を積んだ人材の育成という複数の要素が整う必要があります。
一つの制度だけで状況が大きく変わるというよりも、これらの要素が段階的に改善されていく中で、少しずつ環境が整っていくと考えるのが現実的かもしれません。
訪問介護における外国人材の活用を検討されている方へ
訪問介護の分野における外国人材の活用は、解禁から1年以上が経過した現在も発展途上にあります。
施設併設型では一定の成果が見られる一方で、居宅訪問介護では受け入れ体制や手続き面の課題が依然として残っています。
今後の制度変更によって状況が変わる可能性もあるため、最新の動向を把握しながら検討を進めていくことが大切です。
施設併設型の訪問介護での受け入れを検討されている場合は、すでに施設型の介護で外国人材を受け入れた実績がある事業所であれば、そこで得た経験やノウハウを活かすことができます。
居宅訪問介護での受け入れを検討されている場合は、手続きの流れや必要な準備について事前に情報を集めておくことで、受け入れの見通しが立てやすくなります。
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