外国人材の雇用とライフイベント|施設側が知っておきたい備えと心構え
外国人材を雇用する施設が増える中で、女性職員の妊娠や出産といったライフイベントへの対応が新たな課題として注目されています。
妊娠や出産は本来おめでたいことであり、雇用する側としても祝福したいという気持ちがあるでしょう。
しかし特定技能や育成就労といった在留資格で働く外国人材の場合、就労期間が限られていることから「妊娠・出産への対応が必要になることはないだろう」と考えている施設が少なくないのが現状です。
実際には就労期間の長短にかかわらず、在留中であってもライフイベントは誰にでも起こり得るものです。
本コラムでは外国人材の女性職員におけるライフイベント、特に妊娠・出産に焦点を当て、施設側が事前に知っておきたい備えや心構えについて解説します。
ライフイベントが「想定外」になりやすい背景
外国人材の受け入れにおいて、ライフイベントが想定外になりやすい背景を確認します。
限られた就労期間がもたらす先入観
特定技能の在留資格で働く場合、就労できる期間は最長5年間です。
育成就労においても在留期間には上限があり、その間に介護福祉士などの国家資格の取得を目指すという流れが一般的となっています。
こうした制度の特性から、施設側には「限られた期間の中で業務に専念してもらえるだろう」という期待が生まれやすい傾向があります。
しかしこれは、あくまで施設側の想定にすぎません。
そもそも日本人職員であっても、仕事が忙しい時期やキャリアの節目に結婚や妊娠・出産、家族の介護などが重なることはあります。
外国人材だからといって例外ではなく、就労期間が限られていることを理由にライフイベントが起こらないという前提で受け入れ体制を組むことにはリスクがあるのです。
ライフイベントは「起こり得るもの」として捉える
妊娠や出産を理由とした不利益な取り扱いは、法律で禁止されています。
産前産後休業や育児休業の取得は、在留資格の種類を問わず認められており、外国人材であっても日本人職員と同じ制度を利用できます。
「就労期間中に妊娠・出産への対応が必要な場面はないだろう」という前提ではなく、「いつあってもおかしくない」という想定のもとで受け入れ体制を整えておくことが、結果として現場の混乱を防ぐことにつながるのです。
施設側が知っておきたい背景
妊娠や出産に関して、外国人材ならではの背景を理解しておくことも大切です。
母国での教育環境や文化的背景の違い
国や地域によっては、妊娠・出産や家族形成に関する価値観が日本とは異なる場合があります。
また、性教育の内容や触れる機会にも差があるため、施設側が想定していない形で、妊娠、出産などのライフイベントを迎えるケースも考えられます。
こうした違いを個人の問題として捉えるのではなく、多様な背景を持つ人材がいることを前提に受け入れ体制を整えることが大切です。
情報へのアクセスに差がある
日本で暮らしていれば自然と目にする健康や生活に関する情報も、外国人材にとっては言語の壁や日本の情報媒体に触れる機会の少なさから十分に届いていないことがあります。
妊娠や出産に関する日本の制度についても、入職時に十分な説明がなされていなければ本人が正確に把握できていない可能性があります。
産前産後休業や育児休業を取得できることを知らないまま、働いている人がいる可能性も考えられます。
一部の企業では外国人材の入職時に、日本での生活や制度に関する情報提供を自社の取り組みとして行っているところもあります。
外国人材の雇用を長年にわたって続けてきた企業の中には、女性職員向けにライフプランに関する基本的なガイダンスを実施している例もあり、こうした取り組みは外国人材が安心して働くための環境づくりとして注目されています。
祝福したい気持ちと現場の負担感

外国人材の妊娠・出産に直面した時、施設側には祝福したいという気持ちと現場運営の負担感が同時に生じることがあります。
喜ばしいことだと分かっていても
妊娠や出産の報告を受けた時、施設としては祝福したいという気持ちが湧くのは自然なことです。
しかし就労期間が限られている中で産前産後休業や育児休業に入ることになると、その間の人員補充や業務の引き継ぎが求められます。
特に介護や医療の現場では人員配置基準が定められているため、一人が長期間にわたって不在になることの影響は決して小さくありません。
D&Mキャリアが外国人材の紹介を行う中でも、施設の方から「祝福したい気持ちはあるが、現場の運営を考えると悩ましい」という声をお聞きすることがあります。
こうした葛藤は外国人材に限った話ではありませんが、就労期間に上限がある在留資格の場合には施設側の負担感がより強くなる傾向があるのは事実です。
「資格取得までは、できるだけ業務に集中してほしい」という施設側の期待と、本人のライフイベントとが重なった時に、その感情の整理に苦慮される施設は少なくありません。
事前の想定が対応の質を左右する
ライフイベントが実際に生じた時の対応は、事前にどれだけ備えていたのかによって大きく変わります。
「まさかこのタイミングで」と感じてから対応策を検討するのと、あらかじめ想定した上で体制を整えておくのとでは現場への影響も施設側の心理的な負担も異なります。
産休・育休取得時の人員補充の計画や業務の引き継ぎ体制など、日本人職員の場合と同じ仕組みをあらかじめ整備しておくことが有効です。
外国人材を受け入れる際に「ライフイベントは起こり得る」という前提で体制を構築しておくことが、施設全体の安定した運営につながります。
安心して報告できる職場環境が定着の土台になる

制度面の備えと併せて、職場の中に安心して報告できる雰囲気を作っておくことも欠かせません。
外国人材の中には、妊娠が分かった段階で職場に迷惑をかけるのではないかと不安を感じて報告をためらう人もいます。
報告が遅れると業務の調整にも影響が出るため、本人が早い段階で安心して相談できる環境を日頃から整えておくことが大切です。
日本人職員であっても妊娠の初期段階では報告をためらうことがありますが、外国人材の場合はそこに言語や文化の壁が加わるため、より丁寧な配慮が求められます。
妊娠や出産に関する日本の制度が日本人職員と同じように適用されることを、入職の段階であらかじめ本人に伝えておくこと。
妊娠した場合でも、不利益な扱いは行わないという方針を職場の中で共有しておくこと。
こうした日常的な配慮の積み重ねが、外国人材の方にとっても施設にとっても安心できる職場環境の土台になります。
「起こり得ること」として受け止める姿勢が施設の力になる
外国人材を雇い入れる際には「期間が限られた働き方だからライフイベントは起こらない」と決めつけずに、どの職員にも起こり得る自然なこととして受け止める姿勢が求められます。
事前にライフイベントの可能性を想定しておくことは、何か特別な対策を講じるということではありません。
日本人職員と同じ制度が適用されることを確認して、職場全体でそれを受け入れる体制を整えておく。
こうした準備が施設としての対応力を高めて、外国人材との長期的で良好な関係を築いていくための基盤になるのではないでしょうか。
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