【転職支援の現場から】自己分析に正解はない|転職の軸を作る本当の目的
※当コラムは、D&Mキャリアのキャリアコンサルタントが実際の転職支援で経験したエピソードをもとに執筆しています。なお、個人が特定されないよう、事実関係については一部内容を変更しています。
「自己分析はやったのですが、面接でうまく話せないのです」
転職活動を始めるにあたって、自己分析に取り組む方は多いのではないでしょうか。
書籍やインターネットの情報を参考に自分の強みや弱みを整理して、これまでのキャリアを棚卸しする。
こうした作業は、転職活動の第一歩として広く知られています。
しかし自己分析を一通り終えたはずなのに、面接で志望動機や転職理由を掘り下げられると答えに詰まってしまう。
応募先を選ぶ段階で何を基準にすれば良いのかが定まらず、迷い続けてしまう。
こうした状況に陥ってしまうのは、自己分析の「目的」を見失っているからかもしれません。
先日、私たちD&Mキャリアに相談にいらしたA様も同じような壁に直面していました。
本コラムではA様の事例をもとに、自己分析とは何のために行うものなのか、そして転職活動の中でどのように活かしていくのかについてお伝えします。
A様との出会い
A様がどのような状況で私たちのもとにご相談に来られたのか、ご紹介します。
A様のプロフィール
A様は30代後半の法人営業職の方です。
現職では5年以上にわたって法人向けの提案営業に携わっており、安定した実績を積み重ねてこられました。
現職に対して強い不満があるわけではなかったものの、「もう少し自分の力を発揮できる環境があるのではないか」という思いから転職活動を始めたとのことです。
当社にご相談に来られた時点で、活動を始めてから約4ヶ月が経過しており、かなりの数の求人にエントリーしている状態でした。
A様が直面していた課題
A様は転職活動を始めた当初、書籍やインターネットの情報を参考にしながら自己分析に取り組んでいました。
自分の強みや弱み、これまでの経歴を一通り整理したメモもお持ちでした。
しかし面接の場で「なぜ転職したいのですか」「次の職場に何を求めていますか」と聞かれると、自分でも納得のいく答えが出てこない。
書類選考を通過しても、面接で深掘りされると言葉に詰まってしまう状況が続いていたのです。
「強みや弱みは整理したつもりなのですが、それ以上どうすれば良いのか分からなくて」
A様はそうおっしゃっていました。
面談で見えてきたこと
私たちはA様とじっくりと面談を行い、これまでの活動状況を一つ一つ確認していきました。
自己分析の「目的」を確認する
お話を伺う中で見えてきたのは、A様の自己分析が「面接で聞かれそうな質問への答えを用意する作業」になっていたということです。
長所は何なのか、短所は何なのか、前職で何を達成したのか。
こうした項目を一つずつ埋めていくことに意識が向いていて、「自分はなぜ転職したいのか」「次の職場に何を求めているのか」という根本的な問いに対しては十分に向き合えていない状態でした。
さらにエントリー先を確認したところ、業界も扱う商材もかなり幅広い状態でした。
「法人営業」という方向性はあるものの、どのような業界のどのような営業職が自分に合っているのかが定まらないまま応募を続けていたのです。
視点を変えて考える

そこで私たちはA様に、自己分析に対する視点を変えることを提案しました。
「自己分析は、面接での受け答えを準備するためだけのものではありません。ご自身がこの先どのような環境で働きたいのかを見つけるための作業でもあります」
A様にそうお伝えした上で、まずは「今の職場のどこに物足りなさを感じているのか」を一緒に掘り下げていきました。
お話を重ねる中でA様が気づかれたのは、自分が物足りなさを感じていたのは年収や待遇ではなく「チームで成果を出す実感が得にくい環境にいた」ということでした。
現職では個人の数字が重視される評価制度の中で、チームとして動く機会がほとんどなかったそうです。
この気づきをきっかけに、「チームで動ける組織で働きたい」という条件が明確になりました。
さらに「自分が扱いたい商材は有形か無形か」「どのような規模の企業であれば力を発揮できそうか」といった点についても、一つ一つ整理を進めていきました。
こうした作業は面接で上手に話すための準備というよりも、転職先を選ぶための「自分自身の判断基準」を作る作業です。
自己分析の目的を面接対策から転職活動全体の軸作りへと広げたことで、A様の活動には方向性が生まれていきました。
自己分析は一度では終わらない
A様の事例に限らず、自己分析について私たちが支援の中でお伝えしていることがあります。
それは転職活動の入口で一度だけ取り組んで終わりにするのではなく、活動を通じて継続していくことの大切さです。
自分の特徴や価値観を整理した上で、実際に求人情報を見たり面接を受ける中で、「この要素は思っていた以上に自分にとって大切だった」「こちらの条件は実はそれほど優先度が高くなかった」といった気づきが生まれることがあります。
そうした気づきを踏まえて再び自己分析を深めて、応募先の方向性を調整していく。
こうした繰り返しの中で、転職活動の軸はさらに明確になっていきます。
自分のことを多面的に理解できていれば、面接の場面や求人の特徴に応じて「今回はこの側面を伝えよう」という判断もしやすくなります。
自己分析はどれだけ深めても、やりすぎるということはありません。
自分のことを深く知るほど、応募先や面接の場面に応じた伝え方の幅が広がっていきます。
方向性を明確にした結果

A様は面談後にエントリー先を見直して、チームでの営業体制を重視する企業に絞って活動を再開されました。
方向性を絞り込んだことで書類選考の通過率が改善して、面接でも「なぜこの会社で働きたいのか」という問いに自分の言葉で答えられるようになったのです。
面談から約2ヶ月後、A様は希望していた条件に近い企業から内定を獲得されました。
「最初は自己分析の正解を探そうとしていたのですが、正解を出すことよりも自分のことを深く知ることの方が大事だったのですね」
そのA様の言葉は、自己分析の本質を端的に表しているように感じます。
「自分を深く知る」ことが転職活動の軸になる
面接の場では、表情や話し方を工夫することで一定の好印象を作ることができる部分もあります。
テクニカルな対応が、ある程度通用する場面があるのは確かでしょう。
しかし自己分析にはそうした「正解」がありません。
「こう答えれば評価される」という型がないからこそ、自分自身に向き合うしかないのです。
自己分析は面接で上手に話すためだけのものではありません。
なぜ転職したいのか。何を大切にして働きたいのか。転職先に何を求めるのか。
こうした問いに向き合い続けることが、応募先の選定にも面接での受け答えにも、そして内定後の判断にもつながっていきます。
転職活動において自分のことを深く理解して、自分の言葉で語れる状態を作ること。
それが自己分析の本来の役割ではないでしょうか。
自己分析の進め方でお悩みの方へ
自己分析は一人で取り組んでいると行き詰まってしまうことがあります。
自分では気づかなかった視点が、第三者との対話の中で見えてくることも少なくありません。
自己分析の進め方や転職活動の方向性でお悩みの方は、お一人で悩まずにD&Mキャリアへご相談ください。
これまでのご経験やご希望をお聞きしながら、転職活動の軸を一緒に整理していきます。
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