介護業界の「二極化」時代に外国人材採用が果たす役割
2025年、国内の介護事業者の倒産件数は過去最多を更新しました。
背景にあるのは物価や人件費の上昇、慢性的な人材不足、事業承継の難しさといった介護業界が長らく抱えてきた構造的な課題です。
これらの課題が短期間で解消される見通しは立っておらず、介護事業者を取り巻く厳しい状況は今後も続いていくと考えられます。
こうした状況の中、採用や事業展開にかけられる経営資源の面で、事業者ごとに置かれている状況の差が少しずつ広がりつつあります。
D&Mキャリアが日々の採用支援を通じて感じるのは、業績が安定している事業者ほど外国人材の受け入れにも早くから取り組み、人材確保の選択肢を広く持っているということです。
一方で、財務面での余力が限られる小規模事業者ほど、人材不足から業績悪化へと進む「負のスパイラル」から抜け出す糸口を見出しづらい状況にあります。
本コラムでは介護業界で進む二極化の実態と、その中で外国人材採用が果たしうる役割について、採用支援の現場から見える景色をお伝えします。
介護業界で進む「二極化」の実態
介護業界で何が起こっているのか、現場の視点からご紹介していきます。
業績好調な事業者と体力を削られる事業者
近年の介護業界では、業績が好調な事業者と資金繰りに追われる事業者との格差が広がってきています。
業績が安定している事業者はM&Aによって規模を拡大して、スケールメリットを活かした経営を展開しています。
採用面でも日本人職員の確保に加えて、外国人材の受け入れに必要な初期費用や住居の整備費用を確保しやすく、人材戦略の幅を広く持てる状況にあります。
一方で小規模な事業者の中には、既存の職員の離職をどうにか引き止めることで現場を回しているケースも少なくありません。
採用に投じられる予算が限られる中で、人材確保の選択肢そのものが狭まっているのが現状です。
採用媒体への掲載費用や人材紹介の利用も限定的にならざるを得ず、応募の母数そのものが絞られていきます。
二極化はある日突然起こるものではなく、こうした日々の小さな差の積み重ねによって少しずつ着実に進んでいるのです。
小規模事業者が陥りやすい「負のスパイラル」
財務面での余力が限られる事業者が陥りやすいのが、「職員不足→受け入れ利用者数の減少→売上の減少→採用予算のさらなる縮小」という負のスパイラルです。
職員が足りなければ、受け入れる利用者の数を絞らざるを得ません。
利用者数が減れば売上も下がり、採用に投じられる予算もさらに限られてきます。
限られた予算の中で日本人職員の確保はますます難しくなり、現場の職員にかかる負担が増えて、結果としてまた離職につながってしまう。
一度この循環に入ってしまうと、通常の採用手法だけで抜け出すのは容易ではありません。
このスパイラルを断ち切る一手として、現実的な選択肢となりつつあるのが外国人材の受け入れです。
外国人材採用は人員の補充という側面だけではなく、採用の選択肢を複線化することで事業の安定性を取り戻す意味合いも持っています。
日本人職員の採用環境は今後も厳しさが続く見通し

採用環境の今後について、人口動態と経営環境の両面から考えていきます。
生産年齢人口が減少していく傾向にあるという前提
介護業界の採用環境を考える上で押さえておきたいのが、日本の生産年齢人口が今後も減少していく傾向にあるという前提です。
15歳から64歳までの生産年齢人口は長期的にも減少傾向が続く見通しとなっており、介護業界に限らず労働市場全体で採用競争が続いていく構造になっています。
「数年経てば、日本人職員の採用環境も落ち着くのではないか」という見方もあるかもしれません。
しかし人口構造の面から見れば、採用環境が大きく緩和されることは期待しづらいのが実情です。
採用の難しさは一過性のものではなく、これから先も続いていく環境条件として捉えておく必要があります。
その前提に立てば今の採用環境を「乗り切る」のではなく、「構造的に変える」という視点が求められます。
採用コストの構造的な上昇
採用市場での競争が続く中で、採用コストは上昇し続けています。
求人広告の掲載費用や入職後の定着支援にかかる費用など、採用に関わるコストはいずれも年々膨らんできています。
限られた予算の中で日本人職員だけに頼った採用を続けることは、小規模事業者にとっては大きな経営リスクとなり得ます。
採用コストの上昇は目に見えづらい形で業績への圧迫要因となり、じわじわと経営体力を奪っていきます。
採用の入り口を一本に絞ったままにしておくことのリスクが、以前よりも大きくなってきているのが現状です。
外国人材採用は「特別な選択」ではなく「現実的な一手」
外国人材採用への向き合い方について、近年変化している受け入れ環境と採用現場での実務的な動きを踏まえてお伝えします。
外国人材採用のハードルは下がってきている

外国人材の受け入れというと、特別な取り組みのように感じられる事業者も少なくありません。
しかし外国人材の受け入れに関する環境整備が進み、受け入れ実績のある事業者が全国で増えてきた今、外国人材採用は特別な選択肢ではなくなってきています。
住居の確保や生活サポートの初期費用こそ必要となりますが、採用後の定着率を考えれば日本人職員と比較しても遜色のない成果が出ているケースも多く見られます。
受け入れ事業者同士の情報交換の場や、監理団体・登録支援機関のサポート体制も整ってきており、以前と比べて取り組みやすい環境が整いつつあります。
一人目の受け入れ実績が次の採用を支える
外国人材の受け入れを初めて検討される事業者からよくいただくご質問が、「いきなり何人も受け入れるのは難しいのではないか」というものです。
実際、外国人材の受け入れは一人から始めるという事業者も少なくありません。
一人目を迎え入れることで、施設としての受け入れ体制や生活サポートのノウハウが現場に蓄積されていきます。
一度こうした実績ができれば二人目、三人目の受け入れは一人目よりもスムーズに進めやすくなります。
受け入れ実績そのものが、将来の採用を支える資産となっていくのです。
将来的に職員の高齢化や退職が重なった時に、外国人材を含めた複数のルートから採用できる体制があるかどうかは、事業の継続性に大きく関わってきます。
少人数でも「地盤」を築いておくことが将来の備えになる
介護業界の二極化は、短期間で一気に進むものではありません。
日々の採用判断、人材戦略の積み重ねによって、少しずつ事業者間の差が広がっていきます。
「今はまだ外国人材採用に踏み切るタイミングではない」と、お考えの事業者も少なくないかと思います。
しかし日本人職員の採用環境が今後ますます厳しくなっていくことを踏まえると、少人数でも外国人材の受け入れ実績を作っておくという選択は、将来のリスクに対する現実的な備えとなり得ます。
人材不足が深刻化してから初めて外国人材採用に取り組むよりも、まだ比較的余裕のあるうちに受け入れの地盤を築いておく方が、長期的に見た経営の安定につながるのではないでしょうか。
外国人材採用は「負のスパイラル」を断ち切るための有力な一手となり得る選択肢の一つであり、少人数の受け入れからでも始められる現実的な取り組みです。
介護業界の採用環境の変化や外国人材の受け入れを初めてご検討の事業者は、D&Mキャリアへお気軽にご相談ください。
施設の規模、現在の人員状況、受け入れのご意向などを丁寧にお伺いした上で、施設にとって無理のない形での受け入れプランをご一緒に考えてまいります。
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