事務長採用のタイミングと選定のポイント

クリニックの経営において、「事務長」は大きな役割を担う存在です。
しかし医療機関によっては事務長を置かずに運営しているケースがあり、「本当に事務長が必要なのか」「どのような人材を採用するべきなのか」と悩んでいる経営者も少なくありません。
本コラムでは、事務長の採用を検討しているクリニックの経営者に向けて、採用のタイミングや人材選定のポイントを解説します。
事務長の採用を検討するタイミング
クリニックの経営において、事務長の採用を検討するべき状況には様々なケースがあります。
以下のような状況に心当たりがあれば、事務長の採用を検討するタイミングかもしれません。
バックオフィス業務が上手く回っていない
業者とのやり取りや勤怠管理など、バックオフィス業務が滞りがちになっている場合は注意が必要です。
「スタッフの勤怠管理を適切に行いたい」「医療機器メーカーとの契約更新を計画的に進めたい」「助成金申請の手続きを進めたい」と考えているにもかかわらず、「時間がなくてなかなかできない」と感じることが増えているのなら事務長の採用を検討するべきタイミングと言えるでしょう。
スタッフの離職が続いている
スタッフの離職が続くような状態も、事務方の体制に問題があるサインかもしれません。
スタッフ間の業務バランスや労務管理に問題が生じていると、離職につながりやすくなります。
事務長がいることでスタッフの業務負担の調整や労務管理が改善されて、離職率の低下につながるケースも少なくありません。
事業規模の拡大
クリニックが単独の診療所から複数拠点に分院展開したり、訪問診療を開始する時なども、事務長の必要性が高まります。
事業規模が拡大すると各事業の統括管理や業務の標準化などが重要となるため、事務長のようなバックオフィス全体を管理できる人材が必要になります。
院長の負担が増えている

院長がバックオフィス業務に追われて、本来の診療業務に支障が出ている場合も事務長の採用を検討するべきでしょう。
院長が診療に集中できる環境を整えることで、クリニック全体のパフォーマンスが向上します。
事務長に業務を委譲することで、院長の負担を軽減して組織運営が効率化できるようになります。
外部の専門家への過度な依存
クリニックによっては、税理士などの外部の専門家に様々な業務を依頼しているケースがあります。
「税理士に任せておけば大丈夫」と考えて専門外の業務まで任せてしまうと、対応の遅れやレスポンスの遅さといった問題が生じることがあります。
表面上は問題なく見えても実は業務が滞っているケースもあるため、外部の専門家への依存が強くなりすぎている場合は事務長の採用を検討するタイミングと言えるでしょう。
事務長がいれば外部の専門家はそれぞれの専門分野に集中できるようになり、より効率的なクリニックの運営が可能になります。
事務長に求められる資質と採用のポイント
事務長を採用する際には、以下のポイントに注意して人材を選定することが重要です。
クリニックの特性を理解している
クリニックという施設の特性を理解しているかどうかは、重要なポイントです。
一般企業とは異なる医療機関特有の業務環境や組織文化を理解していない場合、ミスマッチが生じやすくなります。
医療機関との接点があった人材であっても、必ずしもクリニックでの事務長業務を正確にイメージできているとは限りません。
面接時には、クリニック特有の業務環境への理解度を確認することが大切です。
バックオフィス業務の管理能力

事務長に求められるのは、主にバックオフィス業務の管理能力です。
具体的には、以下のような業務を管理できる能力が重要となります。
勤怠管理や労務管理
スタッフの勤怠状況を適切に把握して、労働基準法に則った管理を行うことが必要です。
シフトの調整、残業の管理、有給休暇の取得促進など、労務面での適切な対応が求められます。
業者との契約管理
医療機器メーカー、システム会社、清掃業者など様々な外部業者との契約内容を把握して適切な管理を行います。
価格交渉や契約更新のタイミングの管理も重要な業務です。
行政対応や許認可関連業務
医療機関特有の各種届出、許認可申請の管理、監査への対応など、行政との窓口としての役割も担います。
収支管理
クリニックの収支の状況を把握して、予算管理や経費削減策の立案など経営面での提案も行います。
医療機関特有の収益構造を理解した上での管理能力が必要です。
事務長はこれらの業務を直接すべて担当するわけではなく、全体を管理・統括する立場です。
それぞれの業務について理解して、適切な管理ができる能力が求められます。
レセプト業務の経験は必須ではない
レセプト業務の経験を事務長の条件に挙げるケースもありますが、必ずしも必須ではありません。
レセプト業務の理解は医療機関の収益構造を把握する上で有益ですが、事務長のメインミッションはバックオフィス業務全体の管理です。
レセプト業務の経験に固執すると、人材の選択肢が狭まってしまう可能性があります。
むしろ労働基準法の理解、契約管理能力、収支管理能力などのバックオフィス業務全般を理解している人材の方が事務長として適している場合が多いでしょう。
「業務範囲」と「権限」を明確にする
事務長を採用する際は、業務範囲と権限の明確化が不可欠です。
事務長が担当する業務と最終決定権の所在を事前に定めておかないと、責任の所在が曖昧になり管理ができなくなります。
特に初めての事務長採用では、院長やスタッフが現在担っている業務の中から事務長に移管する業務を具体的にリストアップしましょう。
同時に、各業務における事務長の決裁権限も明確に設定することが重要です。
業務と権限の線引きが明確であれば、事務長は自信を持って職務に取り組めるようになり、クリニック全体の運営効率も高まります。
「派遣事務長」からスタートするのも方法です
いきなり常勤の事務長を採用するのではなく、週の稼働日数が2~3日程度の「派遣事務長」を利用するのも一つの方法です。
これにより「どの業務を事務長に委譲できるのか」「どのようなスキルセットが必要か」を明確にした上で、常勤採用へステップアップするアプローチが取れるようになります。
ただし稼働日数が限られるため、緊急対応などが難しいことには注意が必要です。
最適なマッチングを実現
事務長の採用は、クリニック経営において重要な決断です。
バックオフィス業務が滞っている、スタッフの離職率が高い、外部の専門家への依存度が高いなどの兆候が見られる場合は事務長の採用を検討するタイミングです。
事務長の採用にあたっては、以下がポイントになります。
- クリニックの特性を理解している人材を選ぶ
- バックオフィス業務全般を管理できる能力を重視する
- レセプト業務の経験にこだわりすぎない
- 業務範囲と権限を明確にする
- 必要に応じて「派遣事務長」からスタートする
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