医療事務 2024.01.12

診療所(クリニック・医院)における事務長の立ち位置

診療所(クリニック・医院)における事務長の立ち位置

診療所(クリニック・医院)の運営には医師や看護師だけでなく、組織全体を支える重要な役割があります。それが「事務長」のポジションです。

事務長と一口に言っても、その職務や責任は多岐にわたります。本コラムでは診療所における事務長の具体的な役割と、どのようなことを求められるのかを明らかにします。

医療機関の事務職について

医療機関の事務職は医療サービスの質を保持し、受診者のケアをサポートする上で重要な役割を担っています。
これらの職務は多岐にわたり、役割によって大きく3つに分けることができます。

事務長

事務長は、診療所の事務的な業務全体を監督する最高責任者です。経営の方針を理解し、それを組織全体に伝達する責任があります。

医療知識に加えて診療所の経営、財務、人事管理などに関する深い理解を持つ必要があります。事務長の判断によってスタッフの働きやすさ、組織全体の成果に直接的な影響を与えます。

医事課系職員

医事課の業務は受付窓口、保険請求、診療情報管理、医事統計、診断書の作成、カルテの管理など多岐にわたります。

医事課は診療報酬、つまり診療所の収益に直結する業務を担う部署であり、医療機関にとってなくてはならない存在です。そのため即戦力となる経験者は常にニーズがあります。

総務課系職員

総務、人事・労務、経理・財務などの業務を担う事務職員です。
医療機関の総務課系職員は、通常、新卒者を積極的に採用することは少なく、一般企業などでこれらの業務経験を積んだ人が大半を占めます。

診療所における「事務長」のポジション

事務長は、診療所の運営効率とサービス品質に大きな影響を与える重要なポジションです。しかし一般的な診療所では事務長がおらず、多くの場合、院長が事務管理の役割も兼ねています。

事務長のポジションを設けるかどうかの判断

事務長の採用は、診療所の運営状況や院長の方針に左右されます。

一般的には開業初期は資金の制限から最小限のスタッフで運営が始められ、院長やその配偶者が経理、人事、日常業務の管理などを兼務します。そのため、開業時に事務長を採用することは少ないのです。

事務長を採用する傾向にある診療所は?

受診者の人数が安定して経営に余裕が出てくると、院長が医療に集中するために事務長の採用を検討するようになります。特に点数の高い診療を行っている、自由診療の比率が高いなど収益性の高い診療所では事務長を積極的に採用する傾向にあります。

診療所が事務長の採用を検討するタイミング

診療所が事務長の採用を検討するタイミング

診療所では開業後しばらくして、安定した経営が確立された後に事務長の採用が検討されることがよくあります。開業初期は診療所の設計、集患のための販促活動、設備投資、スタッフの採用に焦点が当てられ、かつ事務長がいなくても診療所は開院できるからです。

それでは、どのようなタイミングで事務長の採用が検討されるのでしょうか。

分院を展開する時

分院を展開する際には、院長は診察をしながら分院準備を進めなくてはならないため業務負担が増大します。これまでの診療所の運営と並行して新しいスタッフの教育などを行う必要が生じるため、この段階で事務長を配置するケースがよくあります。

開院前の準備、分院運営のサポート、開院後の分院長やスタッフの教育など院長が担っていたことを事務長が対応することで、院長が診療に専念できる環境が整えられるようになります。

新しいことを始めるタイミング

院長が診療以外に講演活動や執筆活動などの新しいことに取り組む際、これまで通りに診療やスタッフのマネジメントを行うと作業にかけられる時間が限られます。そのため、このような時にこそ事務長のサポートが必要となるのです。

新しい取り組みには研究や外部とのコミュニケーションをとる時間を捻出しなければならないため、事務長が診療所の運営業務の一部を担うことで、院長は新たな分野の業務に集中することができるようになります。

事務長に求められるもの

事務長に求められるもの

従来、事務長のポジションは金融機関出身者などが担うことが多かったため、財務や経理の専門知識が重視されていました。事務長は医師である院長が医療に専念できるように、医療行為以外はすべて自分の仕事であると考える必要があります。

モチベーションの高さと実行力

事務長には、高いモチベーションと実行力が求められます。これには現場の管理から経営まで幅広い業務を見渡し、迅速に問題を特定し解決する能力が求められます。

高いコミュニケーション能力

事務長は院長の代理として公の場に立ったり、スタッフのマネジメントを行う役割も担うため、高いコミュニケーション能力が求められます。

業務の効率化、スタッフの離職率低下、安定した集患など事務長の取り組みによって成果が見えやすいため、事務長が変わると診療所の雰囲気が一変するほどです。

強みを打ち出す企画力

事務長には財務や経理のスキルだけでなく、診療所の特色を生かした企画力や安定した経営を支えるためのマネジメント能力が求められます。

また診療所の経営環境が以前より厳しくなっているため、2年ごとに行われる診療報酬の改定に迅速に対応し、経営を柔軟に舵取りする能力が必要です。

院長をサポートするマルチな知識

事務長は籍を置く診療所の特性を理解し、どういった層を主なターゲットとして狙っていくか、場合によっては自由診療をどこまで行うか、というような戦略を策定する能力が必要です特に新規開業の場合には、マーケティングのスキルが重要です。

開業初期は当然ながらその診療所のことを誰も知らず、近隣にすでに地元に根付いた診療所が存在する可能性もあります。そのような状況の中で診療所の経営を成功させるには、市場分析や競合調査などを通じてどうすれば知名度を上げられるかといった知識が必要になるのです。

効果的な集患戦略を立てられるような経営学や、医療関連の知識を持つ人材は特に重宝されます。

医療機関での就業経験

診療所によって考え方は様々ですが、前述したような資質に加えて、経営に積極的に関わるためには医療に関する知識が不可欠です。

医療業界が未経験の事務長にも医療分野の共通言語を理解してもらいたいと考える医療従事者が多いため、医療機関での事務職経験と実績は事務長候補にとって有利になります。

またこれまで診療所には事務長を内部で育成していくという発想があまりありませんでしたが、将来の事務長候補として採用するケースも増えています。

医療業界における「人」の重要性

IT化やAIの進展が進む中、多くの職業が影響を受けると予測されていますが、医療業界はこれからも「人」の役割が重要であると考えられています。こうした背景から医療業界への転職を検討する人が増えています。

医療業界では求人情報が一般にはあまり公開されないことが多く、特に上位職の募集は内部のネットワークを通じて行われることが一般的です。そのため医療業界でのキャリアを目指す人は、適切な情報源や専門的なネットワークを利用することが重要です。 医療業界での事務職、特に事務長のポジションに興味がある人はD&Mキャリアへご相談ください。自分の市場価値やキャリアプランの新たな可能性を知る機会を提供します。

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