面接での「本音」と「建前」|当たり障りのない回答がかえって不利に働く理由
転職活動の面接対策として、「本音は言わず建前で答える方が良い」というアドバイスを目にすることがあります。
退職理由や志望動機について、率直に伝えづらい本音をそのまま口にするのではなく、無難な建前を用意して答えた方が通過しやすいという考え方です。
このアドバイスは、一見すると理にかなっているように思えます。
しかし実際の面接の場では、抽象的な建前で答えることがかえって不利に働く場面も少なくありません。
用意した建前が面接官に深掘りされなかった結果、具体性に乏しく輪郭のぼやけた印象だけが残ってしまうことがあります。また、他の質問との一貫性が取れずに人物評価を下げてしまう可能性もあります。
本コラムでは面接での「本音」と「建前」の扱いについて、D&Mキャリアが日々の転職支援を通じて感じている考え方をお伝えします。
「建前で答える」ことで生じるリスク
建前で答えることが、面接でどのように作用するのかを整理していきます。
抽象的な建前は「輪郭のぼやけた印象」を残す
退職理由を質問された時に、本音を避けて「将来の可能性を広げたいと思った」「新しい環境でキャリアを積みたいと考えた」といった抽象的な建前で答える方は少なくありません。
こうした表現は無難なものではありますが具体性に欠けるため、面接官の記憶にも残りにくい回答になりがちです。
さらに注意しておきたいのは、面接官が必ずしも深掘りの質問をしてくれるとは限らないという点です。
「将来の可能性」という言葉の裏にどのような背景や思いがあるのかを面接官が尋ねてくれれば、そこで補足できる機会は生まれます。
しかしその深掘りがなかった場合には、具体性に乏しい建前の説明だけが面接官の中に残ることになります。
結果として「よくわからない理由で退職しようとしている人」という印象が残り、自社に入社した後も同じように曖昧な動機のまま辞めてしまうのではないかという懸念を与えてしまうことがあるのです。
面接官の立場からすると、曖昧な退職理由はその人の判断軸や価値観が見えないため、採用の判断に慎重にならざるを得ません。
建前は後の質問との一貫性が取りにくい
建前で答えることのもう一つのリスクが、面接全体を通じた一貫性の問題です。
例えば本音では「給与条件に不満があった」と考えているにもかかわらず、建前で「キャリアアップを目指したい」と答えたとします。
その後の質問で「あなたの考えるキャリアアップとは具体的にどのようなものですか」「5年後にどのようなポジションにいたいですか」と掘り下げられた時に、建前として用意していなかった部分で言葉に詰まったり、矛盾する発言をしてしまうことがあります。
面接官は一つの回答だけで判断しているわけではなく、面接全体を通して受け答えの整合性を見ています。建前で取り繕った部分が後の質問で崩れると「この人は本当のことを話していないのではないか」という印象につながり、総合的な人物評価が下がってしまう可能性があります。
「本音」と「建前」ではなく「具体」と「抽象」で考える
ここまでの話を踏まえて、面接での回答を別の視点から考えてみます。
大切なのは「相手に伝わる形で届ける」こと

面接での回答を考える時に「本音か建前か」という二項対立で捉えてしまうと、どちらも極端な選択に見えてしまいます。
本音をそのまま率直に伝えれば失礼になるかもしれないし、建前で取り繕えば深掘りされた時に困るという判断に迷いやすい状況に陥りがちです。
大切なのは「本音か建前か」ではなく、「相手に伝わる形で届けられているか」です。
本音の部分を、面接官が受け取りやすい形に整えて伝える。
これは、本音を隠して別の内容で取り繕うこととは違います。
事実や自分の考えを相手の立場や企業の文脈を踏まえて、適切な言葉を選びながら伝えるということです。
差し支えない範囲で具体的に伝える
退職理由を伝える場面を例に考えてみます。
本音が「上司との関係性に悩んでいた」というものだったとして、それをそのまま「上司と合わなかった」と表現すれば面接官に他責的な印象を与えてしまう可能性があります。
しかし、どのような場面で悩みを感じていたのかを掘り下げると「意見や提案を出しやすい環境で働きたい」「納得感を持って仕事に取り組みたい」という思いがあるかもしれません。
本音の中にある「自分がどう働きたいのか」という部分を、「前職ではチーム単位での業務が中心でしたが、個人の裁量を広げながら成果を出していく働き方に挑戦したいと考えるようになりました」といった形で伝えることはできます。
これは建前で誤魔化しているわけではなく、本音の核にある自分の価値観を面接官が受け取りやすい形で伝えているのです。
差し支えない範囲で具体的に伝えることで、面接官は「この人はどのような環境で力を発揮したい人なのか」を理解しやすくなります。
本音を抽象化して無難な言葉に置き換えるのではなく、本音の中にある前向きな要素を具体的な言葉で表現する。
この姿勢が、面接での納得感のある受け答えにつながります。
本音を伝えることがミスマッチの回避につながる
自分の価値観や仕事観を適切に伝えることには、面接通過の可能性を高める以外にも大切な意味があります。
本音を伝えてこそ、相手も判断できる
面接は求職者が一方的に評価される場ではなく、企業側も「この人が当社で活躍できるか」を判断する場です。
その判断のためには、求職者の本音に基づいた情報が必要になります。
例えば前職で「数字を追うことよりもサービスの質にこだわりたい」という思いが募って退職を考えた場合、その思いを伝えておけば企業側は「当社は数字での成果管理を重視する文化のため、この方の志向とは合わない可能性がある」と判断することもできます。
反対に「当社はサービスの質を重視する風土なので、この人には合いそうだ」と前向きに受け取ってもらえる可能性もあります。
いずれにしても、自分が大切にしていることを伝えることで初めてお互いにとっての正しい判断材料が揃うのです。
建前で入社した後に待つもの

本音を隠して建前で入社した場合、入社後に「話が違う」というミスマッチが起こりやすくなります。
建前で伝えた志望動機や退職理由と、実際の自分の価値観や働き方の希望との間にずれがあると、入社後の業務や職場環境との不一致が顕在化してきます。
その結果、短期での離職につながってしまうケースもあります。
面接で本音を適切に伝えることは、求職者にとっても「自分に合わない環境を避ける」ための大切なプロセスです。
目先の面接通過のために建前を重ねることが、長い目で見た時にかえって不利益になることもあるのです。
面接は内定を獲得して終わりではなく、入社後に自分らしく働ける環境を見つけるための対話の場でもあると捉えておくことが大切です。
「本音を伝わる形で届ける」という姿勢
面接での本音と建前の扱いについて、「建前で答えればうまくいく」というアドバイスは一つの考え方として参考になりますが、実際の面接の場では別の視点から捉えてみる余地もあります。
抽象的な建前は具体性に乏しい漠然とした印象を残し、後の質問との一貫性も取りにくい。
一方で、本音を適切な形で伝えることは面接官の理解を得やすくするだけでなく、お互いにとってのミスマッチを防ぐことにもつながります。
本音をそのまま口にする必要はありませんが、本音の核にある価値観や働く上で大切にしたいことを、自分の言葉で具体的に伝えることが大切です。
面接でどのように本音を伝えるべきなのか、どのように言葉を整えるべきなのかでお悩みの方はD&Mキャリアへお気軽にご相談ください。
これまでのご経験や考えを丁寧に整理した上で、面接でご自身の言葉を届けられるようにサポートいたします。
会員登録がまだの方へ
- 転職エージェントからのスカウトが届く
- 非公開求人にもエントリーできる
- 転職サポートを受けられる
他にもさまざまなメリットが受けられます。まずはお気軽にご登録ください。








