技能実習制度の過去と現在
皆さま、こんにちは。D&Mキャリアの段田です。
私が技能実習制度の監理団体職員に入職したのは、約15年前の2007年でした。
当時を振り返りますと「技能実習制度を取り巻く環境」に大きな変化が生じていることを実感しています。
今回のコラムでは「技能実習制度の過去と現在」を元監理団体職員の視点でご紹介したいと思います。
制度の変化
これまで外国人雇用の中心となってきた技能実習制度の目的は「技術移転による国際貢献」ですが、実態は「企業にとっては人材確保」「外国人にとっては収入を得ること」が主な目的である現実がありました。
そのような根本的なズレがあるため運用面での矛盾点に疑問を抱えている関係者の方々も多くおられるのではないかと思います。
2017年に技能実習法が施行され「(1)適正な技能実習の実施 (2)技能実習生の保護 (3)制度の拡充」を目的として法整備が進められました。(現在も制度の見直しが検討されています。)
その後、2019年より特定技能制度を中心に「人材の確保」という目的と実態が合致した制度構築が進められています。
採用活動の変化
これまで、実習生を採用する際は海外での現地面接が主流で、監理団体担当者は現地面接会を企画し、日本から社長や人事担当者をお連れすることも主要な業務の一つでした。
面接会では採用人数の3倍~4倍の候補者の中から人選することができ、採用側に有利な環境でした。面接後は家族訪問や観光や夜遊び等を楽しんで日本に帰られるといった具合で「候補者が集まらないかもしれない」という不安はほとんどありませんでした。
受け入れまでに時間はかかるが、計画的に採用出来て実習修了後は帰国するので採用人数をコントロールすることにより人員調整が出来るという点が、企業にとって技能実習制度の大きなメリットでした。
現在、コロナの影響により現地面接が出来ない時期が長く続いたことからリモート面接が主流になっています。
また、日本以外の国(ヨーロッパやオーストラリアなど)を就労先として選ぶ人が増え、さらに円安の影響により日本での就労を希望する人が確実に減ってきています。
一方で日本側の人材不足は相変わらずで、採用側が候補者に選ばれるという現象が起きてきています。
監理団体や企業は「候補者は確保できるか?」「予定時期に人員確保できるか?」等、これまで考えられなかった不安を抱えながら採用活動を行っています。
雇用継続/定着率の変化
これまでの技能実習制度では、実習途中の移籍(転職)は特別な事情が無い限り認められず、実習2号修了時点で帰国するか、実習3号(2年)で延長するかの2択でした。
また、進路の意思確認をする時期が来たら以下のようなやり取りが一般的でした。
実習生 「社長、私は家族のために2年延長したいです。お願いします。」
社長 「A君がもっと仕事と日本語を頑張ったら2年延長させてあげるよ。」
実習生 「はい。わかりました。一生懸命頑張ります。」
現在は、特定技能制度が出来たことにより実習修了後の進路選択肢が増え、帰国・実習3号で継続・特定技能で継続・特定技能で転職の4択になっており、進路の意思確認をする時期が来たら以下のような労使交渉となり、監理団体担当者は話をまとめるのに苦労されているかと思います。
社長 「A君、もうすぐ3年終わるけど、どうする?会社としては残ってもらいたいけど。」
実習生 「今の給与のままだったら別の会社へ行きます。今の私の仕事なら手取りで20万円以上とボーナスが欲しいです。」
社長 「わかった。希望に合うよう考えるよ。」
まとめ
技能実習制度の過去と現在で大きく変わったことは、「企業が都合よく外国人を雇用できる制度・環境ではなくなっている」ということです。その一方で、人手不足が深刻な現場では外国人材に依存する体制が出来上がっています。
何故かトラブルや離職が頻繁に起こる企業に限って「安く、都合よく雇用する意識」を持たれている傾向があります。
実習生や留学生を上手く活用されている企業は、過去も現在も「公平な視点、外国人材と共生する意識」を持っておられます。
外国人雇用の関係者(行政機関、企業、監理団体、支援機関等)は、変化に気づき、直視して外国人材の受け入れや仕組みのあり方を根本的に見つめなおす時期(分岐点)であると感じています。
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