【転職支援の現場から】退職交渉が難航|「辞められない」を乗り越えるために
※当コラムは、D&Mキャリアのキャリアコンサルタントが実際の転職支援で経験したエピソードをもとに執筆しています。なお、個人が特定されないよう、事実関係については一部内容を変更しています
「内定をいただいたのですが、今の会社を退職できそうにありません」
転職活動を進める中で、このような相談を受けることがあります。
せっかく希望する企業から内定を得たにもかかわらず、現職の退職交渉がうまくいかずに身動きが取れなくなってしまうケースです。
先日私たちD&Mキャリアにご相談いただいた40代の男性A様も、まさにそのような状況に置かれていました。
「後任が見つかるまで待ってほしい」と引き留められて、当初予定していた入社日に間に合わない可能性が生じてきたのです。
本コラムではA様の事例を通じて退職交渉が難航した時の対処法と、転職エージェントが果たすことのできる役割についてお伝えします。
退職交渉に悩むA様
まずは、A様がどのような状況に置かれていたのかをご紹介します。
A様のプロフィール
A様は介護施設で主任として働く40代後半の男性でした。
現在の施設で10年以上勤務しており、現場のリーダーとして欠かせない存在となっていました。
A様は家庭の事情から自宅に近い施設への転職を希望されており、私たちのサポートのもとで転職活動を進めていました。
そして希望条件に合う施設から、内定を受けることができたのです。
「後任が見つかるまで待ってほしい」
問題は、退職の意思を伝えた後に起こりました。
A様が上司に退職の意向を伝えたところ、「今辞められると困る。後任が見つかるまで待ってほしい」と言われたそうです。
施設長からも呼び出されて、「Aがいなくなると現場が回らない。せめて3ヶ月は残ってほしい」と強く引き留められました。
A様は真面目な性格で、長年お世話になった施設への恩義も感じていました。
「ここまで言われると、すぐには辞められない」と思い悩み、私たちに相談の連絡をくださったのです。
退職交渉で起こりやすい問題
A様のケースは、決して珍しいものではありません。
退職交渉の場面では、様々な形で引き留めが行われることがあります。
よくある引き留めのパターン
退職を申し出た際に、上司や会社から引き留められるケースには次のようなものがあります。
- 「後任が見つかるまで待ってほしい」と言われる
- 「繁忙期が終わるまで残ってほしい」と言われる
- 「あなたがいないと困る」と情に訴えられる
- 退職届を受け取ってもらえない
- 退職日を一方的に先延ばしにされる
こうした状況に直面すると、転職者は「自分だけわがままを言っているのではないか」と罪悪感を抱きやすくなります。
退職時期の延長がもたらすリスク

しかし退職時期を安易に延長することには、リスクがあります。
内定先の企業には、入社日の希望を伝えているはずです。
その入社日を大幅に遅らせることになれば、内定先の採用計画にも影響を与えます。
場合によっては「そこまで待てない」と、内定が取り消しになる可能性もゼロではありません。
せっかく掴んだ転職のチャンスを、退職交渉の長期化によって失ってしまうことは避けたいものです。
D&Mキャリアでの面談
A様から連絡を受けて、私たちはじっくりと面談を行いました。
状況の整理
まずはA様の状況を詳しくお聞きしました。
施設側は「後任が見つかるまで」と言っているが、具体的にいつまでなのかは示されていないこと。
A様自身は1ヶ月半後の退職を希望していたが、施設側は3ヶ月後を求めていること。
内定先の施設は2ヶ月後の入社を希望しており、3ヶ月後では間に合わないこと。
状況を整理していくと、A様が板挟みになっている構図が見えてきました。
法律上の事実をお伝えする
私たちはA様に、一つの事実をお伝えしました。
「民法上は、退職届を提出してから2週間が経過すれば退職することができます。会社の承認がなくても、法的には退職が成立するのです」
A様は驚いた様子でした。
「2週間で辞められるとは知りませんでした。でも2週間で辞めてしまったら、施設に迷惑をかけることになりますよね」
A様の反応は、多くの転職者に共通するものでした。
法律上の権利があるとはいえ、円満に退職したいという思いは自然なことです。
視点を変える提案
私たちはA様に、視点を変える提案をしました。
「A様の誠実なお気持ちは十分に理解できます。ただ少し視点を変えてみませんか。施設側が『後任が見つかるまで』と言っているのは、本当に後任を探しているからでしょうか。それとも退職を先延ばしにしたいだけでしょうか」
A様は少し考えてから答えました。
「正直なところ、求人を出している様子はありません。私が残ることを前提にしているように感じます」
「そうであれば、待ち続けても状況は変わらないかもしれません。退職日を明確にすることで、施設側も本格的に後任探しを始めるのではないでしょうか」
転職エージェントとしての調整
私たちは、A様と内定先の施設の間に立って調整を行うことにしました。
内定先への状況説明

まず内定先の施設に連絡を取り、A様の現職での状況を説明しました。
「A様は誠実に引き継ぎを行いたいと考えており、現職との調整に時間がかかっております。入社日について、少しご相談できないでしょうか」
内定先の施設からは、「A様のような人材であれば、多少の調整は可能です」とご理解をいただくことができました。
当初の希望より2週間ほど遅い入社日で、調整がつきました。
落としどころを探る
次に、私たちはA様と一緒に現職との落としどころを探りました。
A様の希望は1ヶ月半後、施設側の希望は3ヶ月後。
内定先との調整で得られた猶予は2週間。
この条件の中で、A様が提示できる最大限の譲歩は「2ヶ月後の退職」でした。
私たちはA様に、この線で交渉することを提案しました。
「2ヶ月あれば、引き継ぎの時間は確保できます。後任が見つかるかどうかは施設側の採用活動次第ですが、A様としてはできる限りの対応をしたことになります」
交渉の結果
A様は私たちの提案を受け入れて、2ヶ月後の退職日を明確に伝える決断をされました。
退職届の提出
A様は上司に対して、改めて退職の意思を伝えました。
「これまで大変お世話になりました。退職日については、2ヶ月後の○月○日でお願いしたいと考えています。引き継ぎについては、誠意をもって対応させていただきます」
退職届も同時に提出しました。
口頭だけではなく書面で退職の意思を示すことで、曖昧さをなくすためです。
施設側の反応
施設側は当初、難色を示したそうです。
しかしA様が退職日を明確にしたことで「本当に辞めるのだ」という認識が生まれて、後任の採用活動が動き始めました。
結果として、A様は予定通り2ヶ月後に退職することができました。
後任者への業務説明とマニュアルの作成も完了させて、円満に退職することができたそうです。
退職交渉を乗り越えるために
A様の事例から、退職交渉を乗り越えるためのポイントが見えてきます。
退職日を明確にする
退職交渉が長引く原因の一つは、退職日が曖昧なままになっていることです。
「後任が見つかったら」「引き継ぎが終わったら」という条件付きの退職は、いつまでも実現しない可能性があります。
退職日を明確に伝えることで、現職側も具体的な対応を取らざるを得なくなります。曖昧にしておくことが、かえって双方にとって良くない結果を招くこともあるのです。
一人で抱え込まない
退職交渉で悩んでいる方の中には、一人で抱え込んでしまう方が少なくありません。
「自分のわがままではないか」「これ以上言ったら、関係が悪くなるのではないか」と考えて、言いたいことが言えなくなってしまいます。
こうした場面でも、転職エージェントが間に入ることで状況が動くことがあります。
内定先と入社日の調整を行うことや、退職交渉の進め方についてのアドバイスなど、様々な形でサポートすることが可能です。
転職活動は、内定を得ることがゴールではありません。
無事に入社するところまでがサポートの範囲であり、また、その後に新たな組織でやりがいをもってご活躍いただくことが何より重要だと、私たちは考えています。
退職交渉でお悩みの方へ
転職を決意しても、退職交渉がスムーズに進むとは限りません。
引き留めに合い、「辞められない」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
D&Mキャリアでは、内定後の退職交渉についてもサポートを行っています。
現職との調整に悩んでいる方や、内定先への入社日の相談が必要な方は一人で悩まずにご相談ください。
円満な退職のために、そして新しいスタートを切るために私たちがお手伝いいたします。
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