【転職支援の現場から】「転職しない」という選択肢|転職理由を深掘りして見えてくるもの
※当コラムは、D&Mキャリアのキャリアコンサルタントが実際の転職支援で経験したエピソードをもとに執筆しています。なお、個人が特定されないよう、事実関係については一部内容を変更しています
「今の職場では、もうこれ以上成長できない気がする」
転職を考える理由として、このような思いを抱える方は少なくありません。
キャリアアップを目指したい、新しいことに挑戦したいという前向きな気持ちから転職を検討される方も多くいらっしゃいます。
先日私たちD&Mキャリアにご相談いただいた30代の女性A様も、キャリアの停滞感から転職を考えていらっしゃいました。
しかし面談を重ねる中で、A様は最終的に「転職しない」という選択をされました。
本コラムではA様の事例を通じて、転職理由を深掘りすることの大切さと「転職しない」という選択肢についてお伝えします。
キャリアの停滞感を抱えるA様
A様は、介護施設で介護福祉士として働く30代後半の女性でした。
現在の施設で7年間勤務されており、後輩の指導も任されているベテランスタッフです。
転職を考えた理由
A様が転職を考えた理由は、キャリアの停滞感でした。
「7年間同じ施設で働いてきて、仕事には慣れました。でもこのままここで働いていても、これ以上成長できない気がするのです」
A様はそうおっしゃいました。
後輩の指導は任されているものの役職には就いておらず、今後のキャリアパスが見えないことに不安を感じていらっしゃいました。
「他の施設に移れば、新しい経験ができるのではないかと思って相談に来ました」
A様は転職によって、新しい環境で成長の機会を得たいと考えていらっしゃったのです。
転職理由を深掘りする
私たちはA様と時間をかけて面談を行いました。
転職のご希望をお聞きするだけではなく、現在の状況や今後のキャリアについて詳しくお話を伺いました。
「成長できない」の中身を確認する
A様がおっしゃる「成長できない」とは、具体的にどういうことなのでしょうか。
私たちはA様に、いくつかの質問をさせていただきました。
「A様が考える『成長』とは、どのようなことでしょうか」
A様は少し考えてから、「管理職として施設運営に関わりたい」「後輩の育成だけではなく、チーム全体のマネジメントを経験したい」とおっしゃいました。
「現在の施設で、そのような機会について上司の方に相談されたことはありますか」
A様は首を横に振りました。
「相談したことはありません。でも7年いて役職に就けていないので、難しいのかなと思っています」
思い込みの可能性
A様のお話を聞いていて、私たちはあることを感じました。
A様は「現職では成長できない」と思い込んでいらっしゃるのではないか、ということです。
7年間勤務して役職に就いていないのは事実ですが、それは「機会がなかった」のか「A様が希望を伝えていなかった」のかでは意味が大きく異なります。
私たちはA様に、率直な考えをお伝えしました。
「A様、もしかすると現職でもキャリアアップの道があるかもしれません。まずは上司の方に、管理職を目指したいというお気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか」
現職での可能性を探る

A様は私たちの提案に、少し戸惑った様子でした。
転職を勧めないことへの驚き
「転職エージェントへ相談したのに、転職を勧めないのですか」
A様の反応は、ある意味で当然のことでした。
転職エージェントは、求職者が転職することで成り立つビジネスです。
転職を勧められると思って相談に来られた方にとって、「まずは現職で」という提案は意外だったかもしれません。
しかし私たちは、A様にとって最善の選択を一緒に考えたいと思っていました。
「もちろん転職という選択肢もあります。ただA様のお話をお伺いしていて、現職でまだ試せることがあるのではないかと感じました」
私たちは続けてお伝えしました。
「転職先で管理職を目指すのと現職でキャリアアップを目指すのとでは、どちらがA様にとって良い選択でしょうか。まずは現職での可能性を確認した後、判断しても遅くはないと思います」
上司への相談を提案
私たちはA様に、上司への相談を具体的にどのように進めるかをお伝えしました。
まずは「今後のキャリアについて相談したい」と、上司に時間を取ってもらうこと。
そしてその場で管理職を目指したいという気持ちと、そのために何をすれば良いかを率直に聞いてみること。
「上司の方がA様のキャリアアップをどう考えているのか、聞いてみないとわかりません。もしかするとすでにA様を管理職候補として考えているかもしれませんし、そのための準備を進めてほしいと思っているかもしれません」
A様は少し考えた後、「一度、上司に相談してみます」とおっしゃいました。
上司との面談
後日、A様から連絡がありました。
予想外の反応
「上司に相談してきました。驚きました」
A様によると、上司はA様のキャリアアップへの意欲を歓迎してくださったそうです。
そして「実はA様には、来年度からユニットリーダーを任せようと考えていた」と打ち明けられたとのことでした。
「上司は私がキャリアアップに興味があるかどうか、確信が持てなかったそうです。私から何も言わなかったので、『今の仕事に満足していると思っていた』とのことでした」
A様は7年間、キャリアアップへの希望を伝えていませんでした。
上司も、A様の意向を確認しないまま時間が過ぎていたのです。
現職でのキャリアパス
上司との面談で、A様の現職でのキャリアパスが明確になりました。
まずはユニットリーダーとしてチームマネジメントの経験を積み、その後は主任、さらには施設長補佐へとステップアップしていく道筋が見えてきたのです。
「転職しなくても、ここで成長できる道があったのですね」
A様はそうおっしゃいました。
A様の決断

A様は「転職しない」という選択をされました。
現職に留まる理由
A様が現職に留まることを決めた理由は、いくつかありました。
7年間培ってきた信頼関係があること。
施設の利用者やご家族との関係が築けていること。
そして何より、この施設でキャリアアップできる道が見えたこと。
「新しい環境で一からやり直すよりも、ここで積み上げてきたものを活かしてステップアップしたいと思いました」
A様の言葉には、納得感がありました。
転職活動をしたからこそ得られた気づき
A様は「転職相談をして良かった」ともおっしゃっていました。
「転職エージェントに相談することで、自分のキャリアについて真剣に考えるきっかけになりました。もし相談していなかったら、モヤモヤしたまま働き続けていたと思います」
転職相談は、必ずしも転職することがゴールではありません。
自分のキャリアを見つめ直して、最善の選択を考える機会でもあるのです。
転職理由を深掘りすることの大切さ
A様の事例から、転職理由を深掘りすることの大切さが見えてきます。
「なぜ転職したいのか」を明確にする
転職を考える時、「今の職場が嫌だから」「何となく変わりたいから」という漠然とした理由で動き出す方もいらっしゃいます。
しかし転職理由が曖昧なまま転職活動を進めても、良い結果にはつながりにくいものです。
そして転職先でも、同じような不満を抱えてしまう可能性があります。
「なぜ転職したいのか」を深掘りしていくと、本当の課題が見えてきます。
その課題が現職で解決できるものであれば、転職しないという選択肢も生まれてくるのです。
現職で試せることはないか
転職を決断する前に、現職で試せることはないかを考えてみることも大切です。
上司にキャリアの希望を伝えてみる、異動の可能性を探ってみる、新しいプロジェクトへの参加を申し出てみる。
こうした行動を起こしてみることで、状況が変わることがあります。
それでも状況が変わらなければ、その時に転職を検討しても遅くはありません。
「やれることはやった」という納得感を持って、転職活動に臨むことができます。
転職を考えている方へ
転職を考えている方の中には、「本当に転職するべきなのか迷っている」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
D&Mキャリアでは、転職ありきではないご相談をお受けしています。
転職理由を一緒に深掘りしながら、本当に転職が最善の選択なのかを一緒に考えさせていただきます。
転職するべきかどうか迷っている方や、キャリアについて相談したい方はぜひ一度ご相談ください。
あなたにとっての最善の選択を、一緒に考えていきましょう。
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