【医療事務の人材確保】採用と定着に向けた新たな取り組み

近年、医療事務の確保が難しい状況が続いています。ある医療機関からは「看護師の採用以上に医療事務の確保が大変だ」という声も聞かれます。
人材確保が困難な背景には様々な要因があります。その一つがインバウンド需要の拡大による他業界への人材の流出です。
医療事務の資格や経験を持つ人材が、より良い待遇を求めて宿泊業界や小売業界などへ流出する傾向が強まっているのです。
本コラムでは医療事務の採用における現状と課題、そして解決に向けた新たな取り組みについて解説します。
医療事務職の人材確保が困難な背景
医療事務職の採用が難しくなっている背景には、複数の要因があります。
医療機関で働く上で必要とされる専門知識や経験は、他の業界でも十分に活かすことができます。
そのため医療事務の資格保持者の選択肢が広がり、従来のように医療機関での就職を第一候補として考える人材が減少しているのです。
また医療機関特有の勤務形態や待遇面での課題も、人材確保を困難にしている要因として挙げられます。
活躍の場が広がっている
医療事務の資格や知識を活かせる職場は医療機関に限らず、企業の経理部門やホテル業界など選択肢が広がっています。
特にホテル業界ではインバウンド需要の高まりを受けて、医療事務経験者の接遇スキルや事務処理能力を高く評価する動きが見られます。
また企業の経理部門では、保険請求業務で培った正確な計数管理能力が評価されています。
医療事務の経験者は、一般企業でも即戦力として期待される傾向にあるのです。
このように医療事務のスキルは様々な業界で評価されており、完全週休2日制や年間休日120日以上など、ワークライフバランスを重視した企業への転職も選択肢の一つとなっています。
医療機関では人材の定着に向けて、こうした状況への対応を検討する必要性が高まっていると言えます。
「中抜け勤務」など勤務形態の課題

医療機関特有の勤務形態も、人材確保を難しくする要因となっています。
多くのクリニックでは土曜日に半日の診療があり、水曜日や木曜日に午前診療のみの日を設けたり、平日に休診日を設けて週5日勤務としているのが一般的です。
また関西圏のクリニックでは、午前診療と午後診療の間に休憩時間を挟む「中抜け勤務」となるケースもあります。
こうした勤務形態は求職者にとって魅力的な条件とは言えず、敬遠されることがあります。
中抜け勤務の場合、クリニック近隣に居住していないと休憩時間を有効活用することが難しく、遠方からの通勤者にとっては負担となります。
また土曜日に勤務がある場合、平日に代休を取得できたとしても、家族との時間や私生活の充実を重視する傾向にある若手人材には敬遠される要因となっています。
週休3日制を導入する企業が増える中で、従来型の勤務形態では人材の確保が困難になっています。
そのため一部の医療機関では、新たな勤務形態の導入や柔軟な働き方の実現に向けた取り組みを始めています。
従来型の雇用条件
通勤手当の上限設定や退職金制度など、従来型の雇用条件も人材確保の障壁となっています。
例えば通勤手当の上限を1万円に設定しているクリニックでは、遠方からの通勤者の採用が困難となります。
これは「近隣に住む人材が応募してくる」という従来の採用環境を前提とした設定ですが、医療事務の確保が難しくなっている今、幅広いエリアから人材を確保する上での制約となっています。
また、退職金制度は必ずしも魅力的な待遇とは限りません。
働き方に対する価値観が多様化する中で、将来の退職金よりも毎月の給与に上乗せされる方が好ましいと考える傾向が見られます。
さらに確定拠出年金制度の普及により、退職金に代わる資産形成の選択肢も増えています。
こうした状況を踏まえて、一部の医療機関は退職金の前払い制度や確定拠出年金制度の導入など、新しい形の処遇制度への移行を検討し始めています。
医療機関における新たな取り組み
こうした状況を踏まえて、新たな取り組みを始める医療機関もあります。
医療事務職の採用と定着に向けて、従来の慣習や制度にとらわれない柔軟な対応を模索する動きが広がっているのです。
特に働き方改革への対応や処遇改善など、時代に即した取り組みを積極的に導入する医療機関が増えています。
勤務形態の見直し
土曜日の診療の廃止や完全週休2日制の導入など、従来の常識にとらわれない取り組みを実施する医療機関が出てきています。
一般的なクリニックでは土曜日の午前に診療を行い、平日1日と日曜日に休診日を設けるのが通例です。
しかしある医療機関では土曜日を休診日として、平日のみの診療体制に移行しました。
この取り組みにより職員の働きやすさが向上して、採用においても良い反応を得ているようです。
給与体系の見直し
退職金制度を見直して確定拠出年金制度を導入したり、退職金の前払い制度を導入する動きも見られます。
また通勤手当の上限見直しなど柔軟な条件設定を行うことで、採用エリアの拡大をはかる医療機関も増えています。
人材確保と定着に向けた今後の展望

医療事務の人材確保と定着には、従来の常識にとらわれない柔軟な発想が求められます。
医療機関を取り巻く環境が大きく変化する中で、働き方改革への対応、処遇の見直し、組織体制の整備など、多面的なアプローチが必要となっています。
働き方改革への対応
完全週休2日制の導入や中抜け勤務の解消など、働き方改革への対応は避けて通れない課題となっています。
働き方改革を進める上で、業務の効率化や人員配置の見直しなどの運営体制の整備も重要となります。
タスクの優先順位付け、業務分担の最適化、時差出勤制度の導入による柔軟な勤務時間の設定など、具体的な施策を組み合わせることで働きやすい環境づくりを実現している医療機関も出てきています。
処遇の見直し
医療事務の専門性をより反映した給与体系の整備や、職場環境の充実が求められています。
医療機関の経営においては人件費が大きな割合を占めるため、一度に大きな改善は困難かもしれません。しかし、人材確保の観点からは避けて通れない課題と言えます。
この課題に対しては段階的なアプローチも有効です。
まずは通勤手当の見直しや資格手当の新設など、比較的取り組みやすい項目から着手して、その後給与体系全体の見直しを進めていく方法も効果的です。
また福利厚生面での充実をはかることで、金銭的な処遇以外の面でも魅力的な職場づくりを目指すことができます。
組織体制の整備
一人の職員に過度な負担がかからないように、適切な人員配置と業務分担を行うことも重要です。
複数名の常勤職員を配置することで休暇取得時のバックアップ体制が整い、より働きやすい環境を実現することができます。
また業務の標準化やマニュアル整備を進めることで、新人教育の効率化や業務の質の向上も期待できます。
さらに、経験豊富な職員から新人へのノウハウ継承がスムーズに行える体制を整えることで、組織全体の底上げにもつながります。
業界の特性を踏まえて丁寧にサポート
D&Mキャリアでは、医療業界の特性を深く理解した転職エージェントが医療事務への転職に関する様々なご相談に対応しています。
働き方改革や処遇制度の見直しなど医療業界で進む新しい取り組みについても、日々情報収集を行い最新の動向を把握しています。
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