他の業界から転職した事務長の悩みは?
医療・介護業界、特に病院における事務長のポジションは経験と実績が求められる重要な役職であり、他の業界からこのポジションに転職する人も少なくありません。
本コラムでは、他の業界から病院の事務長に転職した人々が直面する課題や悩み、そしてそれらを乗り越えるためのポイントについて解説します。
他の業界から病院事務長への転職
病院の事務長ポジションは通常、内部昇格やリファーラルでの採用が主流です。しかし経営改革や新しい視点の導入を目的として、他の業界から人材を登用するケースもあります。
他の業界からの転職が求められている理由
他の業界から人材を登用する理由には、病院経営の効率化や新たな経営戦略の導入、さらには組織改革を進めるためといった背景があります。
こうした需要に応えるために、金融機関の出身者、一般企業での管理職経験者、さらには他業種でのマネジメント経験を持つ人材が病院事務長として転職するケースが見られます。
それぞれの業界で培った経営のノウハウや組織管理のスキルを活かし、病院経営に新たな視点をもたらすことが期待されています。
他の業界出身の事務長が直面する主な課題
病院には一般企業とは大きく異なる組織文化があり、他の業界から転職してきた事務長はこの文化の違いに戸惑うことがあります。
実際の例
ある大手航空会社から病院の事務長に転職した人は、「250名ほどのスタッフがいる大きな病院で非常に苦労した」と語っています。長年のマネジメント経験があっても、医療現場では全く通用しなかったというのです。
医療・介護の専門知識の不足
医療や介護の現場を運営するためには、ある程度の専門知識が必要です。しかし他の業界から転職してきた事務長はこの知識が不足している傾向にあります。
特に医療用語や制度の理解、診療報酬制度の複雑さ、医療安全や感染対策について十分な知識を持っていないことが課題となります。
職員とのコミュニケーション
医療現場では、各職種のプロフェッショナルが自分の専門性に誇りを持って働いています。そのため、他の業界から来た事務長の意見が受け入れられにくいことがあります。
医師や看護師との信頼関係を構築することの難しさや、各職種の専門性を尊重しつつ経営的視点を導入する難しさ、さらには医療の分野で素人扱いされるなどのコミュニケーションに関する課題があります。
経営と医療の両立
病院経営では経営効率と医療の質の両立が求められます。しかしこの両立は非常に難しく、他の業界から来た事務長にとっては特に大きな課題となります。
経営効率を追求することへの医療現場からの反発や、医療の質を維持しつつ経営改善を図る難しさ、さらには長期的な視点での経営戦略などのバランスの取れた判断が求められます。
課題解決のポイント
それでは、このような課題を乗り越えるためには何が必要なのでしょうか。課題解決のポイントを挙げます。
謙虚な姿勢と学ぶ意欲を持つ
まず重要なのは、謙虚な姿勢で医療現場を学ぼうとする姿勢です。
現場スタッフから積極的に学び、医療や介護に関する基礎知識を習得する努力を惜しまず、自分の経験や知識を押し付けないことが大切です。
コミュニケーション能力を高める
事務長として医療現場と円滑にコミュニケーションを取るためには、各職種の専門性を尊重しつつ部門間の調整役を担うことが重要です。
例えば業務改善について看護部と医事課で意見が異なる場合、事務長は両者の立場を理解した上でそれぞれの視点を相手にわかりやすく説明し、最適な解決策を導き出す必要があります。
このような調整能力を磨くことで他職種との信頼関係が築けるようになり、効果的な病院運営につながります。
ネットワークを構築する
病院内外でのネットワークの構築も重要です。院内の各部門とのコネクション強化だけではなく、地域の医療機関や行政とのつながり、さらには他の病院事務長とのネットワークを築くことで、より効果的な病院運営が可能となります。
成功事例
ここでは、他の業界から転職して成功した事務長の事例を紹介します。
金融機関出身者の成功例
金融機関出身の事務長が成功するケースは比較的多く見られます。その理由として財務や経営分析のスキルを活かせること、資金調達や財務管理の知識が役立つこと、数字に基づいた経営判断ができることが挙げられます。
ただし「数字が見えて、経営も見える」だけでは不十分で、医療現場の文化や実情を理解して、スタッフとの信頼関係を築くことが成功の鍵となります。
実際の例
ある金融機関出身の事務長は病院に転職した当初、病院のことをまったく理解していないという理由でスタッフから相手にされませんでした。理事長の指名で事務長になったにもかかわらず、看護師に声をかけても応対してもらえない状況だったそうです。
しかし病院の仕組みや医療制度を学び、わからないことがあれば現場のスタッフに質問し、地道に信頼関係を築いていきました。「どろくさい」と言われるほど必死に病院のことを知ろうとする謙虚な姿勢が、少しずつスタッフの心を動かしていったのです。
当初は距離を置かれていた看護部とも良好な関係を築き、病院全体を上手く掌握していきました。
一般企業のマネジメント経験者の成功例
一般企業の拠点管理や海外法人の代表経験をもった人が、一般企業でのマネジメント経験を活かして事務長として活躍している事例もあります。
組織運営のノウハウや新規事業展開のスキルを活かすことで、病院経営に価値をもたらしています。
実際の例
あるスポーツ用品メーカーで海外法人の代表を務めていた40代後半の人が、訪問診療を主とする医療法人の事務長として転職し活躍したケースがあります。
この人はマーケティングの視点を取り入れ、ある診療科の想定患者数の分析を行い、データに基づいて組織構成を最適化するなど戦略的に事業を展開しました。
入職した当初は医療事務やレセプト請求といった専門的な知識はありませんでしたが、これまでの経験を活かして医療サービスを分析し、事務長としての役割を果たすことができたのです。
他業種から事務長へ転職を考える際の注意点
他の業界から病院事務長への転職を考える際は、以下の点に注意が必要です。
病院の規模と文化を見極める
大規模病院と小規模病院では、事務長に求められる役割が大きく異なります。
大規模病院では組織のマネジメントがより重要となり、小規模病院では幅広い業務をこなす必要性があります。
また病院の文化や方針によっても環境が大きく異なるため、自分のスキルや経験が活かせるかどうかを見極めることが重要です。
自分の強みと弱みを把握する
他の業界での経験を活かせる部分と、新たに学ぶ必要がある部分を明確にしておくことが大切です。
活かせるスキルとしては経営分析、組織マネジメント、戦略立案などが挙げられ、一方で学ぶべき分野として医療制度や診療報酬などがあります。
長期的な視点を持つ
病院の事務長として成功するには時間がかかります。短期的な成果を求めるのではなく、長期的な視点で自分の成長と病院の発展を考える姿勢が必要です。
事務長への転職は、挑戦する価値のある転職
他の業界から事務長への転職は、多くの課題や困難を伴います。しかしその困難を乗り越えることで、自分のキャリアに新たな可能性を見出すことができるでしょう。
重要なのは謙虚な姿勢で学び続けること、そして現場を理解しようとする姿勢です。
経営の効率化と医療の質を両立させるという課題に挑戦する意欲がある人にとって、事務長への転職は非常にやりがいのある選択肢となるでしょう。
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