【診療報酬改定】医療業界への影響と転職市場の動向

2024年6月に施行された診療報酬改定により、医療業界の働き方や人材需要に大きな変化が起きています。
今回の改定では医療従事者の処遇改善、医療のデジタル化推進、地域包括ケアシステムの強化などが主要なテーマとなっており、これらの政策の変更は求職者と医療機関の双方に新たな機会と課題をもたらしています。
本コラムでは医療事務への転職を検討している人や採用を計画している医療機関に向けて、改定のポイントとキャリア戦略のトレンドを解説します。
施行時期の延期の意図
例年4月に実施される診療報酬改定が、2024年度は6月となりました。この背景には医療機関とシステム開発企業(システムベンダー)の負担の軽減という意図があります。
2ヶ月の猶予期間は、医療のデジタル化に向けたシステム改修時間の確保を目的としています。
特に電子カルテやレセプトコンピュータの改修作業における業務負担の集中を解消するために、厚生労働省が施行時期の調整に踏み切りました。
この決定により、医療機関は改定内容の理解と実務対応の準備に余裕を持って取り組むことができました。
処遇改善がもたらす転職市場の変化
今回の改定で注目すべき点は医療従事者の処遇改善です。
看護師や病院薬剤師などを対象に2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップが目指されるほか、40歳未満の勤務医師や事務職員などへの処遇改善が重点的にはかられています。
この動きは転職市場にも影響を与えています。
例えば看護師の求人では夜間保育制度の導入や給与水準の引き上げなど、子育て世代の復職を促す条件整備が進んでいます。
医療事務においても経験や専門性に応じた柔軟な処遇の設定が増えており、転職機会の拡大につながっています。
デジタル化の推進による新たな人材ニーズ
今回の改定では、デジタル技術を活用した業務効率化が評価される仕組みが導入されました。
これに伴い電子カルテの操作に精通した医療事務職員や、データ分析スキルを持つ人材の需要が高まっています。
医療機関におけるデジタル化は、医療の質の向上と業務効率化の両面で重要性を増しています。
具体的にはオンライン資格確認、マイナ保険証の活用、レセプト請求業務の電子化、診療情報の一元管理など、幅広い業務でデジタル技術の導入が進んでいます。
これらの変化に対応できる人材の確保は、医療機関にとって重要な課題となっています。
特に医事課の管理職では、従来の業務に加えてデジタル化推進の経験を求めるケースが増加しており、事務スキルとITリテラシーを併せ持つ人材の採用が活発化しています。
求められるスキルも多様化しており、電子カルテシステムの運用管理だけではなく医療情報の分析や活用、業務改善の提案、さらには職員研修の企画の立案まで、その役割は従来以上に広がりを見せています。
感染症対策の強化と看護師業務の変化

新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえて、感染症対策の体制の整備が診療報酬評価の要件に加えられました。この変更は、医療機関における感染症対策の質の向上を目指すものです。
具体的には感染管理認定看護師の配置、感染対策チーム(ICT)の整備、個人防護具(PPE)の適切な使用、施設内研修の実施体制など、より体系的に感染対策を行うことが求められるようになりました。
また新人教育にも影響が及んでおり、多くの医療機関で感染症対策の研修が強化されています。特に標準予防策の徹底や感染症発生時の初期対応など、実践的な知識と技術の習得が重視されています。
こうした感染対策強化の流れは医療現場全体に広がっており、看護助手など従来以上に幅広い職種で感染症対策のスキルが求められるようになっています。
地域医療連携を担う職種への注目
在宅医療と施設医療の連携強化を目的とした今回の改定では、地域包括ケア病棟の評価体系が見直されました。
これにより在宅復帰率の向上や多職種連携の重要性が増し、医療と介護をつなぐ職種が注目を集めています。
また従来の医療事務から発展した「在宅医療支援事務」では、電子処方箋システムの運用や在宅患者データの管理など、デジタルスキルと医療知識を併せ持つ人材が求められています。
地域の医療・介護資源を効率的に活用するために、こうした専門職の重要性は今後さらに高まると予想されます。
診療報酬改定を踏まえた転職活動のポイント
今回の診療報酬改定では医療従事者の処遇改善やデジタル化の推進、地域医療連携の強化など医療機関の運営体制に大きな変化がもたらされています。
これらの変更は医療現場で働く人のキャリアにも様々な影響を与えており、転職市場にも新たな動きが生まれています。
そこで医療事務への転職を考えている人に向けて、今後の転職活動で特に重要となる以下の3つのポイントについて解説します。
処遇改善に伴う転職機会の拡大

看護師や医療事務の管理職など処遇改善が進んでいる職種では、各医療機関が待遇面での見直しを行う時期にあたるため、転職のタイミングとして好機と言えます。
多くの医療機関が給与体系の改定や評価制度の見直しを実施しており、転職時により良い条件での採用を期待できます。
特に医療DXの推進に伴い、システム運用やデータ分析に関わる医療事務の需要は高まっています。医療機関側も優秀な人材の確保に向けて、従来以上の待遇を提示するケースが増えています。
また夜勤手当の見直しや育児支援制度の充実など、働き方改革と連動した処遇改善も進んでおり、転職先の選択肢が広がっています。
デジタルスキルを活かした効果的なアピール
電子カルテの操作経験やデータ分析の実績を職務経歴書で具体的に示すことで、採用側が求めるデジタル人材としてアピールできます。
具体的には、使用経験のあるシステムの名称や担当した業務改善プロジェクトの成果などを明記することが効果的です。
またオンライン資格確認やマイナ保険証の活用など、最新の制度に対応したシステム運用の経験も重要なアピールポイントとなります。
医療のデジタル化が加速する中、こうしたスキルの価値は今後さらに高まるでしょう。
地域包括ケアシステムへの理解
在宅医療連携や多職種協働に関する知識を深めることで、これからの医療体制に対応できる人材として評価が高まります。
特に医療と介護の連携強化が求められる中、両分野の制度や用語に精通していることは強みとなります。
また地域連携室での業務経験など、具体的な実績があれば転職市場での優位性が高まるでしょう。
地域医療構想の実現に向けて、こうした知識や経験を持つ人材の需要は着実に増加しています。
まとめと今後のキャリア形成について
今回の診療報酬改定は、医療事務のキャリアに大きな変化をもたらしています。
特に注目すべき変化は以下の3点です。
第一に医療のデジタル化です。電子カルテやオンライン資格確認の普及により、デジタルスキルを持つ医療事務職の需要が高まっています。
第二に地域医療連携の強化です。医療機関と介護施設の連携が進む中、両分野の知識を持つ人材の価値が上昇しています。
第三に処遇改善です。医療事務の役割の拡大に伴い、給与水準の向上や働き方改革が着実に進んでいます。
今後、医療現場の変化はさらに加速することが予想されます。
そのため医療事務を目指す方は、デジタルスキルの習得や資格取得など、計画的なキャリア形成が重要となります。
D&Mキャリアでは医療事務への転職をお考えの方に向けて、業界に精通した転職エージェントが親身になってサポートいたします。
履歴書の書き方から面接対策、資格取得のアドバイスまで、豊富な転職支援実績を活かしてご要望に応じたサポートを提供いたします。
医療事務としての新たなキャリアをお考えの方は、ぜひD&Mキャリアへご相談ください。
会員登録がまだの方へ
- 転職エージェントからのスカウトが届く
- 非公開求人にもエントリーできる
- 転職サポートを受けられる
他にもさまざまなメリットが受けられます。まずはお気軽にご登録ください。