【診療報酬改定の基礎知識】医療機関と転職市場への影響を解説

診療報酬制度は医療機関の経営基盤を支える重要な仕組みであり、医療事務をはじめとする医療業界で働く人のキャリアにも影響を及ぼします。
本コラムでは診療報酬改定の基礎知識から近年の動向、医療事務の転職を考える際のポイントまで幅広く解説します。
診療報酬とは何か?
診療報酬は、医療機関が患者に提供した医療サービスに対して支払われる報酬のことです。
医療機関の主な収入源となっており人件費、設備投資、運営費などに充てられています。
日本の医療保険制度では患者は医療費の一部(1~3割)を自己負担して、残りの部分(9~7割)は健康保険などの公的医療保険から支払われますが、これらを合わせた全体が診療報酬にあたります。。
診療報酬は「点数」で表され、1点が10円に換算されます。
例えば初診料288点であれば2,880円が医療機関に支払われ、患者は一部(3割負担の場合は864円)を負担するという仕組みです。
診療報酬改定とその目的
診療報酬制度は社会情勢や医療ニーズの変化に対応するため、原則として2年ごとに見直しが行われます。
これを「診療報酬改定」と言います。
改定の主な目的は以下の通りです。
- 医療の質の向上と効率化の促進
- 医療従事者の処遇改善
- 新しい医療技術の普及と評価
- 医療費の適正化
- 社会的要請への対応(地域医療の充実、予防医療の推進など)
など
診療報酬改定のプロセス
診療報酬改定は、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)を中心に進められます。
改定の約1年前から議論が始まり医療提供者(医師会、病院団体など)、保険者(健康保険組合など)、公益委員(学識経験者など)の三者による協議が行われます。
ここでの議論を経て、具体的な点数の見直しが決定されます。
改定率(全体としての増減率)は内閣が決定して、最終的に厚生労働大臣が改定内容を告示します。
通常改定は4月1日から適用されますが、2024年度については制度改正に伴うシステム対応の負担軽減のため6月1日からの実施となりました。
近年の診療報酬改定の動向
近年の診療報酬改定では、以下のような傾向が見られます。
医療のデジタル化の推進
電子カルテ、オンライン資格確認、オンライン診療など、医療のデジタル化を促進する項目が評価されています。
医療従事者の処遇改善
看護師や医師などの医療従事者の働き方改革に関連した改定が行われています。
特に看護職員の処遇改善が重点的に進められています。
感染症対策の強化
新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえて、感染症対策の体制整備が評価されるようになっています。
地域医療連携の促進
地域包括ケアシステムの構築に向けて、医療機関間の連携や在宅医療の充実が評価されています。
診療報酬が医療機関に与える影響

診療報酬改定は、医療機関の経営に直接的な影響を与えます。
改定により点数が引き上げられると医療機関の収益増加につながる可能性がありますが、引き下げられると経営に影響が出ることもあります。
特に近年は薬価の引き下げが継続的に行われており、医療機関によっては経営の見直しを迫られるケースも見られます。
また改定は単に点数の増減だけではなく、診療体制や施設基準の変更を伴うことも多く、これに対応するための設備投資や人材確保が必要になることもあります。
例えば医療のデジタル化が進められる中で、電子カルテやオンライン資格確認に対応したシステム整備が求められています。
こうした変化に対応できるかどうかが、医療機関の経営を左右する重要な要素となっています。
診療報酬改定が転職市場に与える影響
診療報酬改定は医療事務をはじめとする医療機関で働くスタッフの業務内容や、求められるスキルにも影響を与えるため、転職市場にも変化をもたらします。
医療事務の役割の変化
医療事務は、診療報酬請求業務のプロとして重要な役割を担っています。
診療報酬改定によって請求ルールが変わると、その対応が求められます。
特に近年の電子カルテやレセプトコンピュータの普及に伴い、システム操作スキルやデータ分析能力を持つ人材の需要が高まっています。
また医療のデジタル化の推進により、オンライン資格確認やマイナ保険証の活用など、新たな知識やスキルが求められるようになってきています。
診療報酬改定を踏まえた転職活動のポイント
医療業界での転職を考える際には、診療報酬改定の動向を踏まえた戦略が重要です。
以下のポイントに注目しましょう。
成長分野を見極める

診療報酬改定では、政策的に推進されている分野の点数が引き上げられる傾向があります。
現在は「医療のデジタル化」「地域包括ケア」「感染症対策」などの分野が重視されており、これらに関連するスキルや経験を持つ人材の需要が高まっています。
転職活動においては、これらの分野に関連する経験やスキルをアピールすることが有効です。
専門性の向上
診療報酬制度は複雑化しており、その専門知識を持つ人材の価値は高まっています。
医療事務であれば「診療報酬請求事務能力認定試験」などの資格取得や、特定の分野(DPC:診断群分類包括評価、介護報酬など)に関する専門知識の習得が、転職市場での優位性につながります。
デジタルスキルの習得
医療のデジタル化が進む中、電子カルテやレセプトコンピュータの操作能力に加えて、データ分析やシステム管理などのスキルを持つ人材の需要が高まっています。
医療事務職においては従来の請求業務に加えてこうしたデジタルスキルを身につけることで、キャリアの幅が広がる可能性があります。
今後の診療報酬改定の見通し
医療を取り巻く環境は大きく変化しており、今後の診療報酬改定ではさらに以下のような傾向が強まると予想されます。
医療DXの加速
デジタル技術を活用した医療サービスの提供や業務効率化が一層推進されるでしょう。
オンライン診療、電子処方箋、AI活用など、デジタル技術を活用した医療の評価が高まると考えられます。
地域包括ケアシステムの強化
社会の高齢化が進展する中、医療と介護の連携がさらに重要視されます。
在宅医療、訪問看護、多職種連携などの評価が高まる可能性があります。
医療事務のキャリアを成功に導くために
診療報酬改定は医療業界全体に大きな影響を与える重要な制度です。
医療機関の経営方針や人材ニーズにも直接的な影響を及ぼすため、医療業界でのキャリアを考えるうえで欠かせない知識と言えるでしょう。
今後の医療事務でのキャリア形成において重要となるのは、以下の3点です。
第一に専門性の向上です。
診療報酬制度の複雑化に伴い、専門知識を持つ人材の価値が高まっています。
第二にデジタルスキルの習得です。
医療のデジタル化が進む中、ITリテラシーの高い人材の需要は増加傾向にあります。
第三に変化への適応力です。
定期的な制度改正に柔軟に対応できる学習意欲と適応力が求められています。
D&Mキャリアでは医療業界に精通した転職エージェントが、診療報酬改定など最新の業界動向を踏まえた転職サポートを行っています。
医療機関の採用ニーズを熟知した転職エージェントが、あなたの経験やスキルを活かせる最適な転職先をご紹介いたします。
医療事務としてのキャリアアップをお考えでしたら、ぜひD&Mキャリアへご相談ください。
会員登録がまだの方へ
- 転職エージェントからのスカウトが届く
- 非公開求人にもエントリーできる
- 転職サポートを受けられる
他にもさまざまなメリットが受けられます。まずはお気軽にご登録ください。