【転職支援の現場から】視点を変えれば道は開ける|経理職への思いに囚われた40代の転職活動

※当コラムは、D&Mキャリアのキャリアコンサルタントが実際の転職支援で経験したエピソードをもとに執筆しています 。
なお、個人が特定されないよう、事実関係については一部内容を変更しています。
転職活動が長期化すると、誰もが「もう無理かもしれない」という思いに囚われることがあります。
先日私たちD&Mキャリアにご相談いただいた40代前半の男性も、大手転職エージェントから次々と経理案件を紹介されては不採用が続き、自信を失いかけていらっしゃいました。
転職回数も重なり、「自分には市場価値がないのではないか」と深く悩まれていたのです。
しかし1時間以上じっくりと面談を行う中で、この方の問題は「経理専従でなければならない」という固定観念にあることが見えてきました。
本コラムでは実際の支援事例をもとに、転職活動における視点の転換の重要性をお伝えします。
経理職にこだわり続けた求職者の実例
私たちがお会いしたA様(40代前半・男性)は元々エンジニアとしてキャリアをスタートして、その後経理職への転身を図った方でした。
医療機関での経理経験もお持ちでしたが、経理専従としての経験年数は決して長くありません。
それでも「今後は経理でキャリアを築いていきたい」という強い思いを持ち、転職活動では経理職に絞って求人を探されていました。
通勤時間と住宅ローンに縛られた転職活動
A様は神奈川県の沿岸部にお住まいで、現職への通勤に片道2時間近くかかっていました。
諸事情により戸建ての住宅ローンを一人で背負っており、年収を下げることも転居することもできない状況でした。
「自宅を売却することも考えましたが査定額がローン残高を下回るため、家を失った上にローンだけが残ることになります」とA様は説明されました。
売却したくてもできない住宅事情と長時間通勤という二重の制約が、転職活動の選択肢を大きく狭めていたのです。
私たちがスカウトメールでお声がけした案件は、今よりも通勤時間が短くて済み、業務内容に経理業務を含む総務課長職でした。
しかしA様は面談中に何度も「経理でキャリアを積みたい」という言葉を口にされました。
エントリーと不採用の繰り返しによる自信喪失

A様は大手転職エージェントに複数登録して、経理カテゴリーで求人を探していました。
システムから自動的に送られてくる経理専従の案件に次々とエントリーしては、書類選考や面接で不採用となることが続いていました。
「年齢の割に経理経験が浅い」「専門性が不足している」という理由で断られることが多く、次第に自己評価のみならず自己肯定感までが低下していきました。
転職活動に疲れ果て、「もう経理は無理なのかもしれない」と諦めかけていたのです。
キャリアコンサルタントからの意外な提案
私たちD&MキャリアはA様の話をじっくりと伺った上で、あえて今回の総務課長案件へのエントリーを取り下げることを提案しました。
なぜエントリーを取り下げたのか
「A様、失礼ですが今の状態で面接を受けても通過は難しいと思います」と私たちは率直にお伝えしました。
総務課長職は将来の事務長候補としての採用であり、医療機関での長期的なキャリア形成を前提としています。
しかしA様からは「医療業界よりも一般企業で経理専門職として成長したい」「診療報酬や医事業務から離れて、純粋な経理業務に専念したい」という強い意向が伝わってきました。
私たちD&Mキャリアは医療業界に特化した他の案件も複数検討しましたが、いずれもA様が求める「一般企業での経理専従職」というニーズとは合致しませんでした。
医療機関への転職意欲が低い状態で面接に臨んでも、その温度差は必ず面接官に見抜かれます。
結果としてまた不採用となり、さらに自信を失うことになってしまうでしょう。
「転職活動ですでに傷ついているのに、わざわざ自分が望まない職種で不採用になる必要はありません。それよりもA様が本当に目指したいキャリアに向けて、適切な支援を受けるべきではないでしょうか」
この言葉にA様は深く頷き、「今まで転職エージェントからそんなことを言われたことはありませんでした。私の本心を理解していただけて本当にありがたいです」と感謝の言葉をくださいました。
経理専従という固定観念からの脱却
私たちはA様に新しい視点を提示しました。
「経理専従でなければ、経理業務ができないわけではありません。中小企業では管理部門全体を少人数で運営しており、経理も総務も人事も担当することは珍しくありません。」
実際にA様も「経理業務ができれば、他の業務が含まれていても構わない」とおっしゃっていました。
それなのに大手転職エージェントのシステムでは「経理職」として登録すると、経理専従の案件ばかりが送られてくるのです。
職種特化型転職エージェントの活用

私たちはA様に、転職活動の方法を根本的に見直すことを提案しました。
大手転職エージェントの限界
大手転職エージェントでは扱う求人数は多いものの、システマチックな条件マッチングが中心です。
「経理経験が浅いが経理業務も含む管理職」といった微妙なニーズは、システムの隙間に落ちてしまいます。
またリクルーティングアドバイザーとキャリアアドバイザーが分業化されていて、深いマッチングが容易でないとも考えられます。
「とにかくたくさんエントリーしてください」という戦略では、A様のような方は不採用となり続けるだけです。
求職者のキャリア形成を最優先に
A様が一般企業での経理職を強く希望されていることを踏まえて、私たちは「経理・財務専門」や「管理部門」といった一般企業の職種特化型転職エージェントへの登録を勧めました。
医療業界に強みを持つ私たちとしては医療機関での豊富な案件をご紹介できますが、A様のように「医療業界から一般企業へ転身したい」という明確な意向がある場合は、その分野に特化した転職エージェントの方がより適切なマッチングができると判断したのです。
こうした転職エージェントは特定分野の企業と深い関係を築いており、求人票には現れない細かなニーズを把握しています。
例えば経理のスキルが高い人には物足りないかもしれませんが、A様のように他のバックオフィス業務も経験がある方にはぴったりという案件があるかもしれません。
私たちD&Mキャリアは、求職者のキャリア形成を最優先に考えています。
完全成功報酬型のビジネスモデルでありながらあえて他の転職エージェントを紹介することもあるのは、その方にとって最適な道を見つけていただきたいという思いからです。
住宅ローンにも目を向けて
面談の中では、転職活動の制約となっていた住宅ローンについても話題になりました。
二年前の査定で売却を断念したというA様に「最近の不動産価格の上昇を考えると、再査定の価値があるかもしれません」とお伝えしたところ、「そんな視点もあるのですね」と新たな気づきを得ていただけたようです。
視点を変えることで広がる可能性
転職活動において「こうでなければならない」という思い込みは、可能性を狭めてしまいます。
A様の事例から学べることは多くあります。
第一に、職種にこだわりすぎないことです。
「経理職」という肩書きより、実際に経理業務ができる環境を探すことが重要です。
第二に、転職エージェントを使い分けることです。
大手だけではなく専門特化型の小規模転職エージェントも活用することで、より適切な求人に出会える可能性が高まります。
第三に、制約条件も定期的に見直すことです。
住宅ローンや通勤時間など変えられないと思っていた条件も、時間の経過とともに変化している可能性があります。
私たちD&Mキャリアは求職者一人一人の状況を深く理解して、時には「エントリーを取り下げる」という提案もします。
それは成約だけをゴールにするのではなく、求職者の長期的なキャリア形成を重視しているからです。
転職活動で行き詰まりを感じている方や、同じような求人に応募しては落ち続けている方は、一度立ち止まって視点を変えてみることをお勧めします。
固定観念に囚われず柔軟な発想で転職活動に臨めば、必ず新しい道が開けます。
私たちD&Mキャリアは、そのお手伝いをさせていただきます。
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