転職すれば確実に「年収アップ」できる?
「転職すれば年収アップは当たり前」「今より給料が下がる転職は失敗」という考えを持っている人もいます。特に最近は転職サイトなどで「年収アップ」を強調する情報に触れる機会が増えており、そうした印象が強まっている傾向にあります。
本コラムでは医療・介護業界における転職時の年収の実際と、年収以外の観点も含めた総合的なキャリア形成について解説します。
転職時の年収についての実際
転職時の年収については、業界によって大きく状況が異なります。医療・介護業界の特徴と実際について見ていきます。
医療・介護業界の特徴
医療・介護業界では、一般企業と比較して転職時の年収アップは比較的難しい傾向にあります。これは業界特有の給与体系や制度によるものです。
特に医師以外の職種では、給与水準があらかじめ設定されていることが多く、前職の年収に関わらず職種、経験年数、役職に応じた年収レンジの中で設定されることがほとんどです。
また評価のポイントも独特で、経験やスキルだけではなくチームワークや受診者・利用者への対応力なども重要な評価基準となります。
年収に関する誤解
「転職=年収アップ」という考え方は、必ずしも現実的ではありません。
「転職するなら必ず年収アップを目指すべき」「年収が上がらない転職は意味がない」「経験を積めば自動的に年収アップできる」という考え方に縛られすぎると、かえって良い転職機会を逃してしまう可能性があります。
転職サイトの情報による影響
転職サイトやスカウトサービスでは、年収アップの可能性を強調する傾向があります。しかしこうした情報に影響されすぎると、実際の市場相場と大きくかけ離れた期待を持ってしまうリスクがあります。
特に医療・介護業界では職種ごとに相場感が存在するため、非現実的な年収アップを期待することは転職活動のモチベーション低下に繋がりかねません。
年収アップが難しいケース
年収アップを目指すこと自体は否定されるものではありませんが、年収アップという理由だけで転職を考えた場合、実現が難しいケースがあります。
特に以下のような状況では、年収アップの可能性は低くなります。
市場価値と年収が合っている
現在の年収が業界相場から大きく外れていない場合や、職責や役職が現在と変わらない場合、新しい職場で即戦力としての活躍が不確実な場合は、転職をきっかけに年収を上げることは難しい可能性があります。
年収アップが見込めるケース
一方で、転職をきっかけに年収アップが見込めるケースがあります。転職による年収アップが期待できるのは、主に以下のようなケースです。
マネジメント職への登用
これまで一般社員として働いていた人が、管理職として採用される場合です。この場合は職責や役割が大きく変わるため、年収アップの可能性が高くなります。
職責の大幅な拡大
より規模の大きな組織での同様のポジションへの転職の場合です。例えば小規模なクリニックから大規模病院への転職では、管理する業務量や求められる責任が増えるため、それに見合った待遇となる可能性があります。
ただし規模の拡大に伴う業務の変化に対応する能力が求められます。
専門性の高い職務への異動
より高度なスキルや資格を活かせるポジションへの転職の場合です。例えば、新たな資格を取得して専門性の高い職務に就く場合などが該当します。
この場合、その専門性に見合った待遇を期待することができますが、それだけの実力と実績が求められます。
キャリアアップとは?
ここまで年収アップの可能性について解説してきましたが、「キャリアアップ」は必ずしも年収アップだけを意味するものではありません。
ここからは様々な形でのキャリアアップの可能性について考えてみます。
キャリアアップの様々な形
キャリアアップには以下のような様々な形があります。
職位のステップアップ
医事課の主任から課長へのステップアップなど、マネジメント職への昇進もキャリアアップと言えます。この場合は人材育成や組織運営といった新たな責任が伴いますが、その分やりがいのある仕事に挑戦できます。
規模の大きい職場環境へ移る
100床規模の病院から300床以上の大規模病院への転職など、より大きな組織での経験を積むキャリアアップです。規模の大きな組織ではより多くの症例や多様な業務に触れる機会が増えて、幅広い経験を積むことができます。
また組織が大きくなることで、昇進の機会も増える可能性があります。
専門性を高める
より高度な医療や介護の現場で経験を積むことで、専門性を高めていくキャリアアップです。専門的なスキルや知識を習得することで、より質の高いケアができるようになります。また特定の分野での専門性を高めることで、自分の市場価値を高めることにもつながります。
転職の優先順位を考える
転職を考える際は年収だけでなく、総合的な視点で判断することが重要です。自分が何を大切にしたいのか、優先順位を整理しましょう。
転職の理由を明確にする
転職を考えるきっかけは人それぞれです。まずは自分が転職に求めることを明確にし、その実現のために何を重視すべきか考えてみましょう。
年収アップ以外にも、以下のような理由で転職を決意するケースがあります。
通勤時間を減らして、可処分時間を増やしたい
現在と同程度の年収でも、通勤時間が大幅に短縮できる場合は生活の質の向上につながります。
より働きやすい環境へ身を置きたい
より働きやすい環境や信頼できる経営方針を持つ組織への転職は、長期的なキャリア形成において重要な選択となります。たとえ年収が現状維持であっても、安心して長く働ける環境を選ぶことは将来的な成長につながります。
キャリアアップの可能性を広げたい
年収は現在と同程度でも、組織の規模や体制によって将来的なキャリアアップの可能性が広がる場合があります。例えば、より規模の大きな組織では将来的な昇進の機会が増える可能性があります。
譲れない条件を明確にする
転職活動を始める前に、自分にとって最も重要な条件を明確にしましょう。
年収、通勤時間、職場環境、将来性など、様々な要素の中で何を最も重視するのかを決めます。
すべての条件を満たす転職先を見つけることは難しいかもしれませんが、優先順位を明確にすることでより良い判断ができるようになります。
長期的な視点で判断する
転職は長期的なキャリア形成の一つのステップです。目先の条件だけではなく、将来を見据えた判断が重要です。
例えば研修制度や資格取得支援などスキルアップの機会が充実している環境を選ぶことで、将来的な年収アップにつながります。自己成長の機会が多い環境では、長期的なキャリア形成が期待できるでしょう。
また組織の規模や成長性は、あなたのキャリアの可能性を大きく左右します。安定した経営基盤を持ち、将来的な発展が期待できる組織を選ぶことで、より多くのキャリアアップの機会を得ることができます。
キャリアアップを成功させるために
転職活動では漠然とした年収アップへの期待にとらわれるのではなく、自分のキャリアにとって本当に重要な要素は何なのかを見極めることが大切です。まずは自分の市場価値を客観的に把握することから始めましょう。
また転職後のキャリアアップについても、段階的なアプローチを考えることをお勧めします。いきなり大幅な年収アップを目指すのではなく、着実に実績を積みながらステップアップを目指すという方法が成功への第一歩になります。
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