外国人材の「一時帰国」への対応|知らないと困る雇用管理の実務ポイント

外国人材を雇用する医療・介護施設で、「一時帰国」への対応は重要な実務課題となっています。
特に技能実習から特定技能へ移行した外国人材の場合、保険料還付制度を利用するための一時帰国は避けて通れない課題となっています。
本コラムでは外国人材の一時帰国について、実務で直面する課題と具体的な対応方法を解説します。
D&Mキャリアが実際に支援してきた事例をもとに、多くの外国人材が問題なく復職している実績から導き出された実践的なノウハウをお伝えします。
保険料還付制度の仕組みと一時帰国の背景
外国人材が一時帰国を希望する大きな理由に、社会保険料の還付制度があります。
脱退一時金という制度
日本で6ヶ月以上保険料を納めた外国人が日本を出国して住民票を抹消した場合、納めた保険料の一部が還付される「脱退一時金」という制度があります。
日本との社会保障協定がない国の出身者にとって、この制度は重要な経済的メリットとなっています。
技能実習生として3年間働いた後、特定技能に移行して働いている外国人材の場合、60万円程度の還付を受けることができます。
ベトナムやインドネシアなどの東南アジア諸国の物価水準を考えると、これは相当な金額であり、家族への仕送りや将来の生活資金として重要な意味を持ちます。
還付を受けるためには一度日本の住民票を抹消する必要があるため、必然的に一時帰国という形を取ることになります。
家族との再会という切実な事情
D&Mキャリアが支援している特定技能外国人材の多くはベトナム出身者ですが、そのほとんどが単身で来日しています。
20代前半から30代という若い世代が中心で、母国には両親や兄弟姉妹を残してきているケースがほとんどです。
3年間の技能実習期間中はなかなか帰国の機会を作れず、特定技能への移行後にようやく一時帰国を検討できる状況になることが一般的です。
実際にD&Mキャリアが対応した事例でも、母親の末期がんが発覚して急遽帰国したケースや、祖母の体調不良で帰国期間を延長せざるを得なかったケースがありました。
雇用契約の解除と再締結の実務
一時帰国における最も重要な実務課題は、雇用契約の取り扱いです。
契約解除の必要性
日本の住民票を抹消して出国する場合、雇用契約を継続したままでは法的に問題が生じる可能性があります。
そのため多くの施設では、一時帰国に際して以下のような手続きを取っています。
- 一旦雇用契約を解除して退職扱いとする
- 帰国期間中は雇用関係を解消する
- 帰国後に改めて雇用契約を締結して再入職とする
この方法により社会保険の資格喪失と取得の手続きも明確になり、法的なリスクを回避することができます。
社宅の取り扱い

外国人材が施設の社宅に入居している場合、雇用契約の解除に伴って社宅からの退去も必要となります。
しかし2週間から1ヶ月程度の帰国のために、完全に退去させることは現実的ではありません。
多くの施設では荷物を最小限まとめて保管して、貴重品は施設で預かり復職時に同じ部屋を提供するという対応を取っています。
帰国期間と有給休暇の活用
一時帰国の期間設定は、施設の業務と外国人材の希望の両方を考慮する必要があります。
標準的な帰国期間
D&Mキャリアの経験では、一時帰国の期間は2週間から1ヶ月が一般的です。
これは移動時間を含めて家族と十分な時間を過ごし、かつ施設の業務への影響を最小限に抑えられる期間となっています。
ただし特殊な事情がある場合は、2ヶ月程度まで延長されるケースもあります。
施設によっては入職日を毎月1日と16日に統一しているところがあり、この場合は帰国から戻ってきても次の入職日まで待機期間が発生することになります。
有給休暇との組み合わせ
労働基準法により入職から6ヶ月経過後に10日、1年6ヶ月後に11日の有給休暇が付与されます。
入職から3年経過時点で20日程度の有給休暇を保有している外国人材が多く、週末や祝日と組み合わせることで3週間の帰国期間を確保できます。
保険料還付のタイミングと有給休暇を組み合わせることで、雇用契約解除期間を最小限に抑えながら外国人材の希望も満たすことができます。
旧正月への計画的な対応

ベトナムをはじめとする旧暦文化圏の外国人材にとって、旧正月は1年で最も重要な家族行事です。
帰国希望の集中への対策
旧正月の時期は多くの外国人材が同時期に帰国を希望するため、施設の人員配置に大きな影響を与えます。
特にベトナム人材が多い施設では、1月下旬から2月上旬にかけて複数名の帰国希望が重なることがあります。
年度初めに旧正月の日程を確認して、帰国希望者の把握と調整を早めに行うことが重要となります。
全員が同時期に帰国することを避けるために、ローテーション制を導入している施設もあります。
第1グループは旧正月前、第2グループは旧正月期間中、第3グループは旧正月後に帰国するという工夫により、最低限の人員を確保しながら全員の帰国の希望を叶えることができます。
高い復職率を実現する秘訣
D&Mキャリアが支援する外国人材の復職率は、極めて高い実績を維持しています。
信頼関係の構築
一時帰国後の復職率を高める最も重要な要素は、日頃からの信頼関係です。
定期的な面談の実施、困りごとへの迅速な対応、文化や習慣への理解と配慮、成長機会の提供といった積み重ねが帰国後も日本で働き続ける動機となります。
帰国期間中もSNSやメッセージアプリを活用して定期的に連絡を取ることで、復職への不安を軽減できます。
帰国直後の到着の確認、定期的な近況の確認、復職日程の再確認など、適度なコミュニケーションは安心感を与えます。
復職時のサポート
長期間職場を離れた後の復帰は、外国人材にとって不安を伴うものです。
復職初日から通常業務に戻すのではなく、オリエンテーションから始めて段階的に通常業務へ復帰させることが効果的です。
まれに発生するトラブルと対処法
ほとんどの外国人材が問題なく復職する一方で、まれにトラブルが発生することもあります。
帰国期間の延長
最も多いトラブル事例は、家族の急病による帰国期間の延長です。
D&Mキャリアの経験でも、母親や祖父母の体調不良で予定を延長せざるを得なかったケースがありました。
このような場合でも事前に対応方法を決めておくことで、円滑に対処できます。
医師の診断書などで状況を確認して延長期間を明確にした上で、代替要員の確保と復職時期の再調整を行います。
人道的な配慮と実務的な対応を両立させることで、施設と外国人材の双方が納得できる解決策を見出すことができます。
また個人的な事情で予定が変更になることもありますが、これらも個別の状況を丁寧に確認して適切な対応を行うことで解決可能です。
重要なのは事前にルールを明確にして、お互いが理解した上で一時帰国に臨むことです。
外国人材の「一時帰国」への対応にお困りなら
外国人材の一時帰国は避けて通れない課題ですが、適切な対応により施設と外国人材の双方にとってメリットのある機会として活用できます。
重要なのは一時帰国を「リスク」として捉えるのではなく、外国人材が長期的に日本で活躍するための「必要な投資」として理解することです。
D&Mキャリアの豊富な実績が示すように、適切な対応方法の確立と運用ルールの整備により高い復職率を実現することは十分に可能です。
D&Mキャリアでは外国人材の採用から定着まで、一時帰国への対応も含めた包括的なサポートを提供しています。
豊富な実績に基づいた実践的なアドバイスにより、担当者の不安を解消して外国人材の活用を成功に導きます。
一時帰国への対応方法や運用ルールの策定でお困りの際は、ぜひD&Mキャリアにご相談ください。
外国人材と施設の双方が安心できる仕組みづくりを、共に実現していきましょう。
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