【外国人材】採用前に確認すべきポイントと宗教・文化への配慮

外国人材の採用において宗教や文化への理解と配慮は、職場での円滑な協働を実現するための重要な要素となります。
特に医療・介護の現場では受診者・利用者との直接的な関わりが多いことから、外国人材が安心して働ける環境づくりが求められます。
「お祈りの時間をどう確保すれば良いのか」「食事面での配慮はどこまで必要なのか」「文化の違いによるトラブルをどう防げば良いのか」といった不安を抱える施設は少なくありません。
しかしこれらの課題は事前の確認と適切な対応により、解決可能です。
本コラムでは外国人材の宗教・文化的背景に応じた職場環境の整備について、具体的な事例を交えながら解説します。
外国人材の宗教的背景と必要な配慮
医療・介護分野で就労する外国人材の出身国は多様化しており、それぞれの宗教的背景への理解が不可欠となっています。
イスラム教徒への配慮事項
近年増加傾向にあるインドネシア人材の多くはイスラム教徒であり、宗教上の習慣への配慮が必要となります。
お祈り(礼拝)への対応
イスラム教徒は1日5回の礼拝が義務付けられており、その時間が勤務中にあたることもあるので、仕事の合間に礼拝を行わなければならない場合があります。
礼拝には清潔な場所と手足を清める水が必要となるため、以下のような対応が求められます。
- 礼拝スペースの確保(使用していない更衣室や会議室の一時利用)
- 手足を清めるための水場の確保(バケツ等での対応も可能)
- 礼拝時間の調整(休憩時間との調整)
- 他の職員への理解の促進
など
実際の運用では必ずしも専用の礼拝室を設ける必要はなく、既存の施設を有効活用することで対応している施設が多くあります。
食事に関する配慮
イスラム教では豚肉やアルコールを含む食品が禁忌とされており、ハラル認証を受けた食品のみを摂取する人もいます。
- 食事提供時の代替メニューの検討
- 弁当持参の許可
- 食材表示の明確化
- 懇親会等での配慮
など
施設で提供する給食にハラルフードを用意することが難しい場合は、本人による弁当の持参を認めることで対応可能です。
ヒンドゥー教徒への配慮事項
ネパール人材の多くはヒンドゥー教徒であり、イスラム教とは異なる配慮が必要となります。
食事制限への対応
ヒンドゥー教では牛肉が禁忌とされており、また厳格な信者は肉類全般を避ける場合もあります。
菜食主義者への対応も含めて、個別の確認が重要となります。
仏教徒への配慮事項
ベトナムやミャンマーからの人材の多くは仏教徒ですが、日本の仏教とは異なる習慣があることに注意が必要です。
宗教行事への参加
旧正月(テト)などの重要な宗教行事には帰国を希望する場合があり、長期休暇の調整が必要となることがあります。
国別の文化的特徴と職場での配慮

宗教以外にも、出身国による文化的な違いへの理解が重要となります。
ベトナム人材の特徴と配慮事項
ベトナム人材は日本の医療・介護分野で特に多く就労している外国人材です。
食習慣への配慮
ベトナム人の多くは生魚を食べる習慣がないため、刺身や寿司などを避ける傾向があります。
職員の懇親会や歓送迎会での食事選びには配慮が必要となります。
コミュニケーションの特徴
ベトナム人は家族や同郷のつながりを大切にする傾向が強く、同国出身者のコミュニティを形成することが多くあります。
職場内でのグループ形成が他の職員との関係に影響しないよう、適切な配慮が求められます。
インドネシア人材の特徴と配慮事項
インドネシア人材は温和な性格の人が多く、介護現場での評価が高い傾向にあります。
時間感覚の違い
インドネシアでは時間に対する感覚が日本と異なる場合があり、就業規則や勤務時間の重要性について丁寧な説明が必要です。
上下関係への意識
年長者や上司への敬意を重んじる文化があるため、指導の際は相手の立場に配慮した方法が求められます。
例えば年下の日本人職員が年上のインドネシア人職員を指導する際には、他の職員の前での直接的な注意は避けて、個別に時間を設けて丁寧に説明すると良いでしょう。
フィリピン人材の特徴と配慮事項
フィリピン人材は英語力が高く、明るい性格の人が多いことが特徴です。
宗教行事への参加
カトリック教徒が多く、クリスマスなどの宗教行事を重視する傾向があります。
可能な範囲での休暇調整が必要となる場合があります。
採用前に確認するべき重要事項
外国人材の採用を成功させるためには面接段階で宗教的な配慮事項、生活習慣、家族状況などを確認し、入職後の職場環境の整備に必要な情報を事前に得ておくことが大切です。
宗教に関する確認事項
宗教は個人的な事項ですが、職場での配慮を適切に行うために必要な範囲での確認は重要です。
確認すべき項目
- 礼拝の必要性と頻度
- 食事制限の有無と内容
- 宗教上着用が必要な衣服(ヒジャブ等)
- 宗教行事への参加の希望
など
これらの確認は「配慮のため」であることを明確に伝えて、差別的な意図がないことを理解してもらいましょう。
タトゥーに関する確認
外国人材の中にはファッションとしてタトゥーを入れている人も少なくありません。
特に介護施設では入浴介助があるため、利用者から見える部位のタトゥーの有無は事前に確認が必要です。
就業規則でタトゥーを禁止している施設では、募集要項に明記することで後のトラブルを防ぐことができます。
家族の状況の確認
外国人材の定着には家族のサポートも重要な要素となります。
確認すべき項目
- 家族の同居希望
- 子供の教育に関する希望
- 配偶者の就労希望
- 母国への一時帰国の頻度
など
特定技能2号では家族帯同が認められるため、将来的な家族呼び寄せの可能性も含めて確認することが望ましいでしょう。
実務的な対応方法と成功事例

宗教・文化への配慮を実際の職場でどのように実現するか、具体的な対応例を紹介します。
礼拝スペースの確保事例
ある介護施設では以下のような工夫で礼拝スペースを確保しています。
具体的な対応例
- 使用頻度の低い相談室を礼拝時間帯に開放
- 床に敷くマットは本人が持参
- 手足を清めるための小型バケツを準備
- 礼拝時間を他の職員に周知してシフトを調整
など
食事対応の実践例
施設での食事提供における具体的な対応方法を紹介します。
ハラルフードへの対応が困難な場合
- 弁当持参を認めて、電子レンジや冷蔵庫の使用を許可
- 職員食堂のメニューに食材表示を徹底
- 豚肉不使用メニューの日を設定
- 近隣のハラル対応店舗の情報提供
など
完璧な対応が難しい場合でも、できる範囲での配慮を示すことで外国人材の安心感につながります。
文化の違いによるトラブル防止策
文化の違いから生じる誤解やトラブルを未然に防ぐための取り組みを紹介します。
職員研修の実施
- 外国人材の出身国の文化・習慣に関する基礎知識
- 「やさしい日本語」でのコミュニケーション方法
- 宗教への理解と配慮の必要性
- 多様性を受け入れる職場づくり
など
日本人職員への事前教育により、外国人材を温かく迎え入れる職場環境を整備できます。
継続的な支援体制の構築
採用後も継続的な支援を行うことで、外国人材の定着率の向上につながります。
定期的な面談の実施
外国人材が抱える悩みや要望を早期に把握するために、定期的に面談を行いましょう。
面談で確認する事項
- 業務上の困りごと
- 生活面での課題
- 職場の人間関係
- 将来のキャリアプラン
など
特に入職後3ヶ月間は環境への適応期間として、きめ細かなフォローが必要となります。
相談窓口の設置
外国人材が気軽に相談できる体制づくりも重要です。
効果的な相談体制
- 多言語対応が可能な相談窓口
- 同じ国出身の先輩職員によるメンター制度
- 登録支援機関との連携強化
- 定期的な交流会の開催
など
相談しやすい環境を整えることで、問題の早期発見と解決が可能となります。
外国人材との協働で広がる職場の可能性
外国人材の宗教・文化への配慮は、多様性のある職場づくりの第一歩となります。
異なる背景を持つ職員が互いを理解して尊重することで、より良い職場環境が実現できます。
実際に外国人材を受け入れた施設からは「日本人職員も異文化への理解が深まった」「職場に新しい視点がもたらされた」といった前向きな声が聞かれます。
宗教や文化の違いを「壁」ではなく「架け橋」として捉えることで、組織全体の成長につながる可能性があります。
D&Mキャリアでは外国人材の採用における宗教・文化への配慮について、豊富な実績に基づいたアドバイスを提供しています。
事前の確認事項から入職後のフォロー体制まで、各施設の状況に応じた支援を行っています。
外国人材の採用を検討されている医療機関・介護施設の皆様は、宗教・文化への配慮を含めた包括的なサポートを提供するD&Mキャリアまでお気軽にご相談ください。
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