外国人材が日本を選ばない理由|賃金格差がもたらす採用危機への対処法

医療・介護において、外国人材の採用が思うように進まない現実に直面する施設が増えています。
かつて日本は外国人材にとって魅力的な就労先でしたが、近年では中国や韓国といった近隣諸国との競争が激化しています。
特に東南アジアからの人材獲得で、日本の優位性は大きく揺らいでいるのが実情です。
本コラムでは外国人材が日本を選ばなくなっている背景と、賃金格差という構造的な問題に対して施設ができる現実的な対策を解説します。
D&Mキャリアが実際の採用支援で得た知見をもとに、外国人材に選ばれる施設づくりのポイントをお伝えします。
日本が外国人材に選ばれなくなっている現実
まずは外国人材の就労先の選択における、日本の立ち位置の変化を理解することが重要となります。
中国・韓国への人材流出
D&Mキャリアが外国人材の採用支援を行う中で、特に顕著な変化が見られるのがベトナム人材の動向です。
一昔前はベトナムから日本への就労希望者が多数いましたが、現在では中国や韓国を選ぶ人材が増加しています。
ベトナムの経済成長により国内の賃金水準も上昇したため、日本に来る経済的メリットが相対的に低下しています。
同じ海外就労を選ぶなら、より高い賃金が期待できる中国や韓国を選択する流れになっています。
賃金格差の実態
外国人材の多くは、母国の家族を経済的に支援することを主目的として海外就労を選択します。
労働環境や住環境も考慮される要素ではありますが、最優先事項は経済的な条件となります。
現在の状況を見ると、同じような業務内容でも中国や韓国の方が高い賃金を提示しているケースが多くなっています。
日本で月収20万円の仕事でも中国では22万円相当の条件が提示されることもあり、この差は外国人材にとって無視できない要素となっています。
円安と物価高のダブルパンチ
近年の急激な円安は、外国人材の実質的な収入を大きく減少させています。
日本円で受け取った給与を母国の通貨に換算すると、以前と比べて大幅に目減りしているのが現実です。
さらに日本国内の物価上昇も、外国人材の生活を圧迫しています。家賃、食費、光熱費などの生活コストが上昇する一方で、賃金はほとんど上がっていません。
仕送りを主目的とする外国人材にとって、手元に残る金額の減少は深刻な問題となっています。
他国との比較における劣位
円安の影響は他国との比較においても、日本の競争力を低下させています。
同じ東アジアでも韓国ウォンや中国元に対して円が弱くなることで、相対的に日本の賃金水準が低く見えてしまっています。
日本の強みだけでは不十分な現状

日本には治安の良さや清潔な環境といった強みがありますが、それだけでは外国人材を惹きつけることが難しくなっています。
治安と清潔さの限界
日本の治安の良さや清潔な環境は、確かに外国人材にとって魅力的な要素です。
しかし母国への送金や将来の生活設計を考える外国人材にとって、これらの要素だけでは就労先を決定する決め手にはなりにくいのが現実です。
例えば「日本なら月収20万円で安全」と「中国なら月収22万円だが治安に不安」という選択肢があった場合、多くの外国人材は後者を選ぶ傾向があります。
2万円という差額が年間24万円の差になることを考えれば、この選択は理解できます。
若い世代の価値観
特に20代から30代の若い外国人材は、治安の面や生活環境で多少の不安があっても高い収入を得ることを優先します。
家族を母国に残している場合は、なおさら経済的な側面が重視されます。
D&Mキャリアの経験でも、日本との賃金格差が大きい国からの人材ほど賃金格差に敏感であり、日本の生活環境の良さよりも収入の多さを重視する傾向が見られます。
医療・介護分野の構造的な課題
医療・介護分野には、賃金を上げたくても上げられない構造的な問題が存在します。
保険制度による賃金の上限
医療・介護施設の収入の多くは、医療保険や介護保険の報酬によって決まります。これらの報酬は国が定めており、施設が自由に価格設定することはできません。
一般企業のように利益を追求して賃金を上げるという選択肢が取りにくく、限られた収入の中で人件費を配分せざるを得ない状況です。
この構造的な制約により、外国人材に競争力のある賃金を提示することが困難となっています。
賃金以外で施設の魅力を高める方法
賃金での競争が難しい中、施設ができる現実的な対策を紹介します。
「やさしい日本語」の実践
外国人材が最も苦労するのが、言葉の壁です。
D&Mキャリアでは「やさしい日本語」の使用を推奨しており、これはコストをかけずに実践できる重要な取り組みです。
標準語をゆっくりと話す、方言や早口を避ける、専門用語をわかりやすく説明するといった配慮により外国人材の精神的な負担を軽減できます。
特に関西地域では方言が強く出やすいため、意識的な配慮が必要となります。
宗教・文化への配慮

イスラム教徒の外国人材には、お祈りの時間や食事の制限があります。
お祈り用のスペースを確保する、ハラール食への配慮をするといった対応は賃金以外で差別化できる重要な要素です。
これらの配慮は大きなコストをかけずに実現が可能であり、外国人材の定着率の向上にも寄与します。
寮や社宅の提供
住居の確保は、外国人材にとって大きな課題です。施設が寮や社宅を提供することで初期費用の負担を軽減して、実質的な手取り額を増やすことができます。
家賃補助という形でも良いのですが、施設が直接管理する寮があれば生活面でのサポートも行いやすくなります。
光熱費込みの寮費に設定することで、外国人材も生活設計を立てやすくなります。
生活支援の充実
買い物への同行、役所での手続きの支援、病気の際の付き添いなど、日常生活のサポートは外国人材にとって大きな安心材料となります。
これらは金銭的なコストよりも、人的な配慮で実現できる支援です。
資格取得のサポート
介護福祉士などの資格取得支援は、外国人材のモチベーションの向上につながります。
勉強時間の確保、受験費用の補助、合格後の待遇改善を明確に示すことで長期的な就労意欲を引き出せます。
明確なキャリアパス
外国人材も日本人と同様に、将来の見通しを重視します。
リーダーや主任への昇進の道筋を示して、実際に外国人材が管理職になった事例があればそれは大きなアピールポイントとなります。
外国人材に選ばれる施設になるには?
外国人材が日本を選ばなくなっている現実は、賃金格差という構造的な問題に起因しています。
医療・介護分野では保険制度の制約により、賃金での競争は限界があることを認識する必要があります。
しかし、賃金以外の要素で施設の魅力を高めることは十分に可能です。
働きやすい環境づくり、住環境の整備、キャリア形成の支援といった取り組みにより外国人材に選ばれる施設となることができます。
重要なのは小さな配慮の積み重ねです。「やさしい日本語」の使用や宗教への配慮など、コストをかけずにできることから始めることが大切です。
D&Mキャリアでは外国人材の採用において、賃金以外の魅力づくりも含めた総合的なアドバイスを提供しています。
豊富な実績に基づき、施設の状況に応じた現実的な対策を提案いたします。
外国人材の採用でお困りの際は、ぜひD&Mキャリアにご相談ください。
厳しい競争環境の中でも、外国人材に選ばれる施設づくりをサポートします。
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