【転職支援の現場から】年収よりも経営への関与を選ぶ理由|ハイクラス人材の新たな価値観

※当コラムは、D&Mキャリアのキャリアコンサルタントが実際の転職支援で経験したエピソードをもとに執筆しています。なお、個人が特定されないよう、事実関係については一部内容を変更しています
「年収を下げてでも転職したい」という相談を受けることがあります。
多くの人にとって転職の目的は年収アップですが、ハイクラス人材になると別の価値を重視するような変化も見られます。
先日私たちD&Mキャリアにご相談いただいた50代の経営幹部の方は、現職で年収3,000万円を得ているにも関わらず年収1,700万円程度のポジションへの転職を希望されていました。
「お金よりも大切なものがある」という言葉の裏には、長年のキャリアを通じて培われた確固たる価値観がありました。
本コラムでは実際の支援事例をもとに、ハイクラス人材が年収よりも経営への関与を重視する理由と、真のキャリアの価値について考察します。
年収3,000万円から新たな挑戦を選んだ経営幹部の実例
私たちがお会いしたA様(50代・事業部長)は大手企業で20年以上のキャリアを積み、現在は主力事業部のトップを務めている方でした。
年収3,000万円という待遇を受けながらも、転職を決意されたのには深い理由がありました。
大企業での限界を感じた瞬間
A様は事業部長として優秀な成果を上げていましたが、重要な経営判断には関与できない状況に不満を感じていました。
「事業戦略を提案しても、本社の承認に半年かかる」「新規事業のアイデアがあっても、既存事業の枠を超えられない」という制約の中で働いていたのです。
面談でA様はこうおっしゃいました。
「年収は確かに高いですが、自分が本当にやりたいことができているのかと問われると答えはノーです。このまま定年まで過ごすことに意味があるのか、最近よく考えるようになりました」
50代という年齢で、残されたビジネスパーソンとしての時間は限られています。
その貴重な時間を、本当にやりたいことに使いたいという思いが強くなっていたのです。
経営の中枢で働くことへの渇望
A様が求めていたのは、経営の意思決定に直接関与できるポジションでした。
具体的には、CMO(最高マーケティング責任者)やCOO(最高執行責任者)といったCXOポジションを希望されていました。
「今の会社では、どんなに頑張ってもCXOにはなれません。本社採用組が占めており、中途入社組の私には道が閉ざされています」とA様は語りました。
大企業特有のガラスの天井が、優秀な人材のモチベーションを奪っていたのです。
CXOポジションが持つ本質的な魅力

私たちD&Mキャリアは、A様のようなハイクラス人材から同様の相談を受けることがあります。
なぜこうした方々は年収を下げてまで、CXOポジションを求めるのでしょうか。
経営の全体像を把握できる醍醐味
CXOポジションの最大の魅力は、経営の全体像を把握しながら意思決定できることです。
事業部長として部分最適を追求するのではなく、会社全体の最適解を考えて行動できます。
A様は「マーケティングだけではなく財務、人事、営業のすべてを俯瞰しながら戦略を立てられるポジションで働きたい」と話されました。
これまでの経験を総動員して、企業価値向上に貢献したいという強い意欲を感じました。
スピード感のある意思決定
中堅・ベンチャー企業のCXOポジションでは、意思決定のスピードが格段に速くなります。
朝の経営会議で決まったことを、午後には実行に移せる環境があります。
「大企業では新商品を一つ出すのに1年かかりますが、スタートアップなら3ヶ月で市場に投入できます。このスピード感こそが、今の私に必要なものです」
A様のこの言葉には、長年大企業で感じていたもどかしさが表れていました。
事業の成長を直接実感できる環境
売上が倍増する、新規事業が軌道に乗る、IPOを達成するなど、CXOは企業の成長を最前線で体験できます。
この達成感は、安定した大企業では得られにくい貴重な経験です。
しかしCXOポジションへの転職には年収面での課題もあるため、私たちはA様に現実的な条件についても説明しました。
「年収は下がりますが、ストックオプションで将来的な資産形成も可能です」とお伝えしたところ、A様の反応は意外なものでした。
「お金のことはもう十分です。それよりも、自分の力で会社を成長させる経験がしたいのです」
年収交渉における現実的な着地点
理想と現実のギャップを埋めることも、私たちキャリアコンサルタントの重要な役割です。
なぜ年収が下がるのか
A様のような大企業の幹部がCXOポジションに転職する場合、年収が下がることが多いのが実情です。
中堅・ベンチャー企業には、大企業のような潤沢な資金がないからです。
しかし私たちは企業側にこう説明しました。
「A様のような経験豊富な人材を採用できる機会は滅多にありません。年収1,700万円でも、御社にとっては投資価値があるはずです」
企業側も「確かに現在の年収3,000万円は出せませんが、業績に応じたインセンティブと将来的な昇給をお約束します」という条件を提示してくださいました。
家族の理解を得るプロセス

年収が大幅に下がることについて、ご家族の理解を得ることも重要な課題でした。
A様はご家族と何度も話し合いを重ねたそうです。
「妻からは『あなたが活き活きと働いている姿を見たい』と言ってもらえました。子供も独立していますし、今の貯蓄で生活には困りません」
ご家族の支えがあってこそ、大きな決断ができたのです。
キャリアにおける「やりがい」の本質的価値
A様の事例から、私たちは改めてキャリアにおける価値観の多様性を認識しました。
年収だけでは測れない満足度
仕事の満足度は、年収だけでは測れません。
裁量権、成長実感、社会的インパクト、人間関係など、様々な要素が複雑に絡み合っています。
A様は転職後、こうおっしゃいました。
「年収は下がりましたが、毎日が充実しています。自分の決断が会社の未来を左右するという責任感とやりがいは、お金では買えない価値があります」
ハイクラス人材の新しいキャリア観
最近のハイクラス人材は、従来とは異なるキャリア観を持つようになっています。
終身雇用という概念が変化して転職が一般的になった今、自己実現を重視する傾向が強まっています。
私たちD&Mキャリアでは、こうした価値観の変化を踏まえた転職支援を行っています。
年収だけではなく、やりがい、成長機会、ワークライフバランスなど、多面的な視点からキャリアを考えることが重要です。
真のキャリアの価値を見つめ直す機会
転職活動は、自分のキャリア価値を見つめ直す絶好の機会です。
年収という数字にとらわれず、本当に大切なものは何かを考えることが重要です。
A様の決断は、決して特殊なケースではありません。
私たちD&Mキャリアでも、同じような悩みを抱えたハイクラス人材からのご相談を受けることがあります。
経営により深く関与したい、スピード感のある環境で働きたい、残された時間を有意義に使いたい。
こうした思いを持つ方々に、最適なキャリアプランを提案することが私たちの使命です。
年収だけではなく、やりがいや成長機会を重視した転職を検討している方は、一人で悩まずにご相談ください。
豊富な実績と経験を活かして、あなたにとって最良の選択をサポートさせていただきます。
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