【転職支援の現場から】前職のコンプライアンス問題を転職理由にする際の伝え方

※当コラムは、D&Mキャリアのキャリアコンサルタントが実際の転職支援で経験したエピソードをもとに執筆しています 。
なお、個人が特定されないよう、事実関係については一部内容を変更しています。
転職の面談で「前職を辞めた理由は何ですか」と聞かれた時、答えづらい事情を抱えている方は言葉に詰まってしまいます。
特に前職でコンプライアンス違反に直面した方は、「正直に話すべきか」「どこまで伝えるべきか」と悩まれることが多いようです。
先日私たちD&Mキャリアにご相談いただいたハイクラス人材の方も、前職での不正会計問題を転職理由としてどう説明するべきか困っていらっしゃいました。
「真実を話せば不利になるのではないか」「しかし嘘をつくわけにもいかない」というジレンマに苦しんでいたのです。
本コラムでは実際の支援事例をもとに、コンプライアンス問題を転職理由とする際の適切な伝え方について解説します。
コンプライアンス違反に直面したハイクラス人材の実例
私たちがお会いしたA様(40代・財務部長)は、15年以上にわたり財務・経理部門でキャリアを積んだ優秀な方でした。
しかし前職で経営陣による不正会計が発覚して、自分は関与していないものの組織への不信感から転職を決意されました。
「本当のことを言えない」という苦悩
A様は最初の面談で、「転職理由を正直に話すことができません」と打ち明けてくださいました。
不正会計という言葉を出せば採用企業から敬遠されるのではないか、自分も疑われるのではないかという不安を抱えていたのです。
実際に他の転職エージェントからは、「キャリアアップのためという理由にしておきましょう」というアドバイスを受けていました。
しかしA様は「嘘をついて入社しても、後で問題になるのではないか」という懸念も持っていました。
ハイクラス転職特有のリスク
ハイクラス人材の転職では、一般職とは異なるリスクが存在します。
特に管理職や経営層への転職では、採用企業がリファレンスチェックを実施することがあります。
リファレンスチェックとは前職の上司や同僚に連絡を取り、候補者の勤務態度や退職理由を確認する調査です。
ここで面接時の説明と異なる情報が出てくれば、内定取り消しになる可能性もあります。
A様も「もし企業が独自に調査したら、不正会計の件が出てくるかもしれない」と心配されていました。
隠し通すことのリスクを理解しているからこそ、どう伝えるべきか悩んでいたのです。
真実を伝えることの重要性とその方法

私たちD&Mキャリアは、A様に「適切な形で真実を伝えること」をアドバイスしました。
隠すのではなく伝え方を工夫することで、むしろ信頼を得られる可能性があるからです。
転職エージェントを通じた事前説明の効果
まず私たちがA様の状況を、採用企業の人事責任者に事前に説明しました。
「前職で不正会計が発覚しましたがA様は関与しておらず、むしろ是正しようとした立場でした」という事実を正確に伝えたのです。
企業側も、「事前に説明してもらえて助かります」「隠さずに話してくれる誠実さを評価します」という反応でした。
このように転職エージェントが間に入ることで、センシティブな情報も適切に伝えることができます。
面接での伝え方の具体例
面接でA様が実際に使った説明方法をご紹介します。
「前職では、組織のコンプライアンス体制に課題がありました。
私は財務責任者として是正を提言しましたが、組織全体の意識改革には至りませんでした。
健全な経営を実現できる環境で、自分の経験を活かしたいと考えて転職を決意しました」
このように否定的な表現を避けながら事実を伝えて、前向きな転職理由につなげることがポイントです。
批判や告発ではなく自分の価値観と今後の目標を中心に語ることで、建設的な印象を与えることができました。
コンプライアンス意識の高さをアピール
反対にコンプライアンス問題を経験したことを、強みに変える方法もあります。
A様は面接で「この経験から、内部統制の重要性を痛感しました」と話して、具体的な改善提案も提示しました。
問題を認識して解決策を考えられる人材として評価されて、最終的に内部監査も担うポジションで内定を獲得されました。
コンプライアンス問題を経験したからこそ、リスク管理に敏感な人材として期待されたのです。
労務管理の問題を転職理由にする場合の注意点
コンプライアンス違反は、不正会計だけではありません。
パワハラ、セクハラ、長時間労働などの労務管理の問題も深刻な転職理由となります。
感情的にならない説明の重要性
私たちが支援したBさん(30代・人事課長)は、前職で上司からのパワハラを受けて転職を決意されました。
最初は「あんな会社は最悪でした」と感情的に話されていました。
しかし面接でそのまま伝えると、「この人は問題があるのではないか」と誤解される可能性があります。
私たちは「事実を淡々と伝える」ことをアドバイスしました。
「前職では、労務管理の改善提案が受け入れられない環境でした。
より従業員を大切にする企業文化の中で、人事の専門性を発揮したいと考えています」
このように個人批判を避けて組織の課題として説明することで、冷静で客観的な印象を与えることができます。
転職エージェントの役割と適切な支援

コンプライアンス問題を転職理由とする場合、転職エージェントの役割は特に重要になります。
求職者の本音を引き出す面談
私たちD&Mキャリアでは、求職者の方が本音を話しやすい環境作りを心がけています。
「ここだけの話ですが」と前置きして話してくださる内容こそ、転職成功の鍵となることが多いからです。
守秘義務を守りながら、企業に伝えるべき情報と伏せるべき情報を適切に判断します。
この判断には経験と専門性が必要であり、一人一人の求職者と向き合う時間を大切にすることでその方に最適な伝え方を見つけることができます。
センシティブな内容であっても信頼関係を築いた上で適切にサポートすることが、私たちの使命だと考えています。
企業との信頼関係を活かした交渉
私たちは日頃から、採用企業と深い信頼関係を築いています。
そのため「この候補者には事情がありますが、必ず御社で活躍できます」という推薦が、説得力を持ちます。
実際にA様のケースでも、私たちの推薦を信頼した企業が「そこまで言うなら会ってみよう」と面接の機会を提供してくださいました。
転職理由の伝え方で変わる採用の可能性
コンプライアンス違反を転職理由とすることは、確かにハードルが高いかもしれません。
しかし適切に伝えることができれば、むしろ誠実で信頼できる人材として評価される可能性があります。
重要なのは以下の3点です。
第一に、嘘をつかずに事実を適切に伝えること。
第二に、批判や告発ではなく前向きな理由として説明すること。
第三に、その経験から学んだことを次に活かす姿勢を示すこと。
私たちD&Mキャリアは、複雑な事情を抱えた転職相談にも数多く対応してきました。
どのような転職理由であっても、求職者の方の立場に立って最善の解決策を見つけることを心がけています。
求職者の方の状況を詳しく伺い、企業に誤解を与えることなく真の価値を伝える方法を一緒に考えます。
コンプライアンス問題で転職を考えている方や転職理由の説明に悩んでいる方は、一人で抱え込まずにご相談ください。
真実と向き合いながら、新たなキャリアを築くお手伝いをさせていただきます。
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