【転職支援の現場から】なぜその年収にこだわるのか|表面的な条件に隠された求職者の本音
※当コラムは、D&Mキャリアのキャリアコンサルタントが実際の転職支援で経験したエピソードをもとに執筆しています。なお、個人が特定されないよう、事実関係については一部内容を変更しています
転職相談では、求職者から希望年収を伺うことから始まることが多くあります。
「年収500万円以上」「現状維持できれば」「できるだけ高く」など、その希望は様々です。
先日私たちD&Mキャリアにご相談いただいた40代の男性A様も、最初に口にされたのは「年収600万円以上でお願いします」という明確な希望条件でした。
しかし職務経歴書を拝見すると、医療業界で同等の経歴を持つ人材であれば年収500万円程度が一般的な水準といえる内容でした。
それでもA様は、「600万円」という数字に強くこだわっていらっしゃいました。
市場価値とのギャップがあるにも関わらず、なぜその金額にこだわるのでしょうか。
その理由を深掘りしていくと、「600万円」という数字の裏に複雑な思いが隠されていることがわかりました。そして転職活動の本質的な課題も見えてきたのです。
本コラムでは実際の支援事例をもとに、求職者が提示する条件の背景を理解することがいかに重要かをお伝えします。
年収600万円という条件に固執した求職者の実例
私たちがお会いしたA様は、医療系企業で営業職として働いている方でした。
転職を決意した理由は会社の業績不振による将来への不安でしたが、面談で最初に口にされたのは「年収600万円以上」という条件でした。
市場価値と希望年収のギャップ
A様の職務経歴書を拝見すると、営業経験は豊富でしたが管理職の経験はなく、特別な資格も持っていませんでした。
医療業界において同様の経歴をお持ちの方の年収相場を見ると、450万円から500万円程度で推移しているのが実情でした。
私たちD&Mキャリアは、正直にこの事実をお伝えしました。
「大変申し上げにくいのですが、現在の医療業界では同様のご経歴の方の年収は500万円前後となることが多い状況です。600万円という条件では、該当する求人が限られてしまう可能性があります」
A様の表情は曇り、しばらく沈黙が続きました。それでも「600万円は譲れません」という返答でした。
一問一答では見えてこない本音
大手転職エージェントであれば、ここで「わかりました。600万円以上の案件を探してみます」と言って該当する求人を条件に沿って紹介するのかもしれません。
しかし私たちは、まずはじっくりと面談を行い、なぜその条件にこだわるのかを理解することが重要だと考えています。
「差し支えなければ、なぜ600万円という金額にこだわられるのか教えていただけませんか」
この質問をきっかけに、A様は重い口を開き始めました。
条件の裏側にあった切実な事情
A様が600万円にこだわる理由は、単純な収入アップの希望ではありませんでした。
前職退職時の年収という基準
「実は、前の会社を辞めた時は年収650万円でした」とA様は打ち明けてくださいました。
A様は5年前、大手医療機器メーカーで営業課長代理として働いていました。
しかし上司との人間関係が悪化して退職を余儀なくされ、現在の会社に転職した際に年収が520万円まで下がってしまったのです。
「家族にも『いつかは元の水準に戻す』と約束していました。だから最低でも600万円は必要なのです」
A様の言葉には、ご家族への責任感と自分への悔しさが滲んでいました。
家族への責任と自己評価の問題

さらに話を聞いていくとA様には中学生と高校生の子供がおられ、教育費の負担が重くのしかかっていることがわかりました。
また奥様からは「前の会社を辞めなければ良かったのに」という言葉を何度も聞かされていたそうです。
「妻は直接文句を言うわけではありませんが、『お父さんの給料が下がったから』という言葉を子供に言うのを聞くと本当に情けなくなります」
A様にとって600万円という数字は単なる年収ではなく、ご家族に対する責任を果たすための最低ラインであり、自己評価を回復するための象徴的な数字だったのです。
視点を変えることで見えてきた新たな可能性
A様の本音を理解した私たちは、発想の転換を提案しました。
基本給だけではない報酬体系への着目
「年収600万円を実現する方法は、基本給を上げることだけではありません。インセンティブや賞与を含めた年収総額で考えてみてはいかがでしょうか」
医療業界の営業職では、基本給は低めでもインセンティブで高い年収を実現できる企業があります。
基本給400万円でも、実績次第では年収700万円を超えることも珍しくありません。
この提案にA様は興味を示しました。
「確かに今の会社は基本給重視で賞与も少ないですが、実力で稼げる環境なら自信があります」
推薦時の説明に信憑性を持たせる
私たちD&Mキャリアは、A様の事情を理解した上で企業への推薦を行いました。
「A様は過去に650万円の年収実績があり、ご家族の事情もあって600万円を希望されています。ただし基本給にはこだわらず、インセンティブを含めた総額でその水準を目指したいという柔軟な考えをお持ちです」
このように背景を含めて説明することで、企業側も「なるほど、それなら理解できる」と納得していただけました。
単に「600万円希望です」と伝えるのとは、説得力が違います。
きめ細かな支援がもたらした成功
A様の転職活動は、視点を変えたことで大きく前進しました。
インセンティブ重視の企業との出会い

私たちが紹介した医療系ベンチャー企業は、基本給は450万円でしたがインセンティブ制度が充実していました。
営業目標を達成すれば年収600万円、大幅に超過達成すれば800万円も可能という報酬体系でした。
面接では、A様の過去の実績と営業スキルが高く評価されました。
特に「実力で勝負したい」という意欲が、成長期のベンチャー企業のニーズと合致したのです。
家族の理解と支援
内定が出た際、A様はご家族にも相談されました。
「基本給は今より少し下がるけれど、頑張れば前の会社以上に収入が得られる環境だ」と説明したところ、奥様も「あなたが前向きに働けるなら応援する」と理解を示してくれたそうです。
A様は後日、こうおっしゃいました。
「最初は年収の数字だけにこだわっていましたが、『なぜ600万円なのか』と深掘りして聞いていただいたおかげで自分が本当に求めているものが見えてきました。家族への責任を果たすことと、自分の実力を試すことの両方ができる環境に出会えて感謝しています」
条件の背景を理解することの重要性
A様の事例から、私たちは改めて転職支援における本質的な価値を認識しました。
数字だけではわからない求職者の思い
転職活動において、年収や勤務地などの条件は重要な要素です。しかしその条件の裏側には、必ず求職者なりの理由や思いがあります。
年収600万円という数字の裏にご家族への責任や自己評価の回復という切実な思いがあったように、すべての条件には背景があるのです。
その背景を理解せずに機械的にマッチングしても、真の満足は得られません。
時間をかけた面談の価値
私たちD&Mキャリアは、一人一人の求職者とじっくりと面談を行います。時には1時間以上かけて、その方の価値観や人生設計まで含めて話を伺います。
効率を重視する大手転職エージェントからすれば、非効率に見えるかもしれません。
しかしこの時間をかけた面談こそが、求職者の本音を引き出して最適な転職支援を可能にするのです。
表面的な条件の奥にある本質を見つめて
転職活動では、条件面ばかりに目が行きがちです。
しかし本当に大切なのは、なぜその条件を求めるのかという背景を理解することです。
A様のケースでは、年収600万円という条件の裏にご家族への責任と自己評価の回復という思いがありました。
その思いを理解したからこそ「基本給にこだわらずインセンティブで目標年収を実現できる環境」という新たな選択肢を提示でき、納得のいく転職ができたのです。
私たちD&Mキャリアは、求職者一人一人の条件の背景にある思いを大切にしています。
表面的な条件マッチングではなく、その方の人生設計や価値観まで含めた総合的な転職支援を心がけています。
希望条件と業界の年収相場にギャップを感じている方や、なぜその条件にこだわるのか自分でも整理できていない方は一人で悩まずにご相談ください。
じっくりとお話を伺い、あなたの本当の思いを理解した上で最適なキャリアプランをご提案させていただきます。
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