介護職が知っておきたいバイタル測定の方法や基礎知識
「バイタル(バイタルサイン)測定」は、介護士にとって重要な業務の一つとなります。
利用者の状態を把握し、適切なケアが行えるように、バイタルを正しく測定できるようになりましょう。
本記事では、バイタル測定の基本的な知識や、正しい測定方法について解説します。
バイタル測定とは?
バイタル(バイタルサイン)とは、「生命の(vital)兆候(sign)」を示す指標です。
一般的には「呼吸」「体温」「血圧」「脈拍」の4項目を測定して、利用者の状態を確認します。
専用機器を使用して、これらの数値を確認することを「バイタル測定」と言います。
継続的に測定することで、利用者の日々の健康状態や、項目ごとの正常値や基準値が把握できるようになります。
バイタル測定の流れ・方法
バイタル測定は、利用者の状態を把握するために欠かせません。
ここからはバイタル測定の流れや、それぞれの項目の測定方法を解説します。
準備
まずは利用者にバイタル測定を行う旨を伝えて、同意を得ましょう。
また、利用者に安心してもらうために、測定の目的や手順についてもわかりやすく説明しておきましょう。
測定
利用者から同意が得られたら、測定を開始します。
測定方法は項目ごとで異なりますので、一つずつ解説していきます。
呼吸
利用者に、「吸って吐く」を1分間繰り返してもらいます。1分間の呼吸数の平均値は12~20回とされていますので、それよりも少なくないか、また多くないかを確認しましょう。
併せて、呼吸音や胸郭・腹壁の動きに異常がないかを確認します。
体温
感温部が腋窩中央部に当たるように、体温計を45度程度の角度で、脇の中央部に差し込みます。この時、体温計の先端が脇の中央部に密着するように、利用者に測定側の脇をしっかりと閉じてもらいましょう。閉じるのが難しいようであれば、反対の手で検温側の腕を押さえてもらってください。
血圧
血圧測定のために、上腕部にマンシェット(腕に巻きつける血圧計のカフ部分)を巻きつけます。正確に測定するために、マンシェット内のゴムの中央部分が上腕動脈の真上にくるようにセットして、指が2本ほど入る程度の強さで巻きます。利用者が長袖を着用している場合、マンシェットが巻ける位置まで袖を上げてください。
脈拍
人差し指・中指・薬指の3本の指の腹を橈骨動脈に軽く当てて、脈拍数を1分間測定します。脈拍数を計測するだけでなく、リズムや強さが一定であるかどうかも確認しましょう。
例えば、脈拍が速すぎる場合には、脱水症状や貧血のほか、心臓で何か問題が起こっている可能性があります。反対に脈拍が遅すぎる場合には、薬の副作用や循環器系の問題などが考えられます。
また、脈拍のリズムに異常がある場合には、不整脈の可能性があり、これは心臓の働きに影響を及ぼし、重篤な状況に繋がる恐れがあるので注意が必要です。
バイタル測定のポイント
バイタル測定時には、数値が正常値・基準値から大きく逸脱していないかを確認します。これに加えて、利用者の様子に異常はないか、いつもと違うところはないかも見ていきます。
ここからは、項目ごとにチェックするべきポイントをお伝えします。
呼吸
呼吸測定の際には、「呼吸回数」と「呼吸方法」を確認します。
呼吸回数は「吸って吐く」を1セットとして、1分間測定して回数に異常がないかをチェックします。
そして、呼吸時には胸部と腹部の状態も確認し、つらそうではないか、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった異音はないかなどもチェックします。
体温
利用者の平熱を把握した上で、異常がないか確認します。気温など、環境の変化によって変動する場合がありますので、できるだけ同じ環境下で計測することが大事です。
体温に異常があった場合、風邪や感染症などが考えられますので、速やかに医師の指示を仰ぐなど、適切な対応を取るようにしましょう。
血圧
高血圧症は高齢者に多くみられる病気で、脳卒中や心筋梗塞に繋がる恐れがあります。日本高血圧学会の「高血圧ガイドライン(JSH2019)」では、74歳までの降圧目標は「130/80mmHg未満」、75歳以上では「140/90mmHg未満(忍容性があれば130/80mmHg未満)」とされています。
こうした基準のもと、利用者の平常値も把握した上で測定を行い、異常がないか確認しましょう。
脈拍
脈拍測定の際には、リズムが乱れていないか、速すぎないか、遅すぎないかなどを確認します。1分間に100回を超える場合は頻脈、50回未満の場合を徐脈と言い、これらは異常値とされています。
こうした異常がある場合、脱水症状や心機能のトラブルなどが疑われます。
バイタル測定における注意点
利用者の健康状態の指標となるバイタルは、正しく測定しなければ正確な情報は得られません。
ここからは、バイタル測定時の注意点について解説していきます。
同じ環境下で測定する
同じ利用者、同じ健康状態であっても、環境が変化するとバイタルに影響が及ぶ可能性があります。そのため、できるだけ同じ環境下で測定するようにしましょう。
以下にポイントをまとめましたので、ご確認ください。
- 室温は20度〜25度前後にしておく
- 同じ時間帯に測定する
- 同じ体勢、部位で測定する
運動・入浴・食事後は30分~1時間ほどあけてから測定する
運動・入浴・食事直後は、血圧が上昇する傾向にあります。なぜなら、循環血液量が増加したり、血管が収縮することがあるためです。
そのため、運動・入浴・食事直後だと、正常な数値が測定できない場合がありますので、30分〜1時間ほどあけて、数値が安定してから測定するようにしましょう。
血圧測定の部位は心臓と同じ高さにする
血圧測定の部位は、心臓と同じ高さに持っていきましょう。血圧は心臓から体の隅々まで血液を送り込むための圧力で、心臓に近い位置で測定することで、より正確な数値が得られるようになります。
腕に合ったサイズのマンシェットを使用する
血液・血圧測定でマンシェットを使用する場合には、腕に合ったサイズのものを使用しましょう。特に血圧測定では、指が2本ほど入る強さで巻くようにしてください。きつすぎたり、ゆるすぎたりすると、正確に測定できないことがあります。
バイタル測定後の記録方法
バイタル測定後は、速やかに記録します。測定した日時と、数値を介護記録に書き込んでいきますが、その際は、鉛筆や消せるタイプのボールペンは使用しないようにしましょう。
また、改ざんがないよう、誤りがある場合は二重線で訂正します。
最近ではデジタル記録や、測定内容を自動で入力できるICTバイタル測定機器を使用する事業所も増えてきましたが、いずれの方法で記録する場合にも、記載漏れやミスなどがないように、何度も記載内容を確認する習慣をつけましょう。
まとめ
介護の現場でのバイタル測定は、利用者の健康状態を見守る上でとても重要です。正確な測定方法を習得することで、利用者の体調変化や異常を早期に把握し、適切なケアを行うことが可能になります。
こうして介護士としてのスキルを磨き、キャリアアップを目指したいという方は、お気軽にD&Mキャリアへご相談ください。あなたのニーズや希望に合わせて、ベストなキャリアプランを考えます。
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