介護 2023.04.21

介護士が覚えておきたいバイタルチェックの基礎知識について

バイタルチェック

介護士の業務には、健康状態を観察するための「バイタルチェック」も含まれます。
こちらの記事では、その「バイタルチェック」について、改めて見ていきます。

バイタルチェックとは

バイタルチェックとは

脈拍や血圧、体温、呼吸などの健康状態を、機器を用いて計測することを、「バイタルチェック」と言います。
バイタルチェックを行い、その結果を用いて対策をすることで、健康的な生活を送ることができるのです。

バイタルチェックを行う目的

バイタルチェックを行う目的は健康状態の把握と推移の確認です。
日本語で「生命の兆候」と訳され、人が生きていることを示す指標である「バイタルサイン」を確認することで、測定時の健康状態を把握することができます。

測定時に異常値が見受けられた場合、速やかに適切な処置をとることで病気の早期発見、早期治療につなげることができます。
また、数週間~数年間といった測定値の推移をみて、薬の服用やケアプランの運動量を見直すなど、適切に対処することで中長期的な健康の維持にも活用することができるでしょう。

バイタルチェックの測定項目について

バイタルチェックの測定項目

バイタルチェックの際には、先にお伝えしたように、「脈拍」「血圧」「体温」「呼吸」を測定します。
より細かな状態の確認が必要な際には、これに加えて、「尿量」と「意識レベル」の測定を行います。

これら測定項目にはそれぞれ、適正とされる数値があります。
それぞれの項目においての、測定方法や適正数値、注意点について見ていきましょう。

バイタルチェックの測定項目1 脈拍

脈拍の適正数値は、65回~85回/分です。
脈拍が1分あたり50回未満の場合は「徐脈」。
1分あたり100回以上の場合は「頻脈」。
と呼び、それぞれ健康に影響を及ぼす異常値とされています。

機器を使用して測定することができますが、機器を使用しない場合には、要介護者の手のひらを上に向け、人差し指・中指・薬指を橈骨動脈にあて1分間の脈拍を計測します。
血圧が低い場合には、橈骨動脈で脈拍がうまく計測できないことがあります。
そういった場合には、大腿動脈・頸動脈などの他の動脈で計測するようにしましょう。

バイタルチェックの測定項目2 血圧

血圧とは、体内を血液が巡る際に、血管壁にかかる圧力です。
血圧には、「最高血圧」と「最低血圧」があり、それぞれ計測します。

  • 最高血圧:血管が収縮している際の血圧。
  • 最低血圧:血管が拡張している際の血圧。

最高血圧の適正数値は、120~130。
最低血圧の適正数値は、70~80です。

心機能や血液量に異常があれば、血圧は適正数値から外れます。
高血圧は、心筋梗塞などのさまざまな病気の要因となるため、注意して見ておく必要があります。
血圧は変動が起こりやすい数値であり、基本的に機器で計測を行います。

バイタルチェックの測定項目3 体温

体温の適正数値は、36.5度ですが、個人差がある点に注意しましょう。
個人ごとの平熱を把握しておき、平熱に対しての上下で体調の判断を行うようにしましょう。

測定は、体温計を用いて行います。
額や脈などにかざし体温を測定するものと、脇に差し込み体温を測定するものとがあります。
脇に差し込む場合には、45度ほどの角度をつけ左脇に差し込むようにしましょう。
差し込んだ後には、脇の中央部と体温計の先端とをしっかりと密着させましょう。

バイタルチェックの測定項目4 呼吸

呼吸の適正数値は、1分あたり12回~20回です。

容態が急変した場合には、呼吸をまず確認します。
呼吸の確認の際には、呼吸回数の測定と併せてどのように呼吸をしているかも確認します。
呼吸時に異音がする場合や、胸の動きに異変がある場合も、体調に異常があるかもしれないため、気をつけて観察をするようにしましょう。

バイタルチェックの注意点

バイタルチェックの注意点

利用者の健康維持などのために重要なバイタルチェックですが、実施する際に注意しておきたいことについても見ておきましょう。

利用者の普段の状態・数値を把握しておく

バイタルチェックにおいて、最も重要なのは、その人の普段の状態や数値をしっかりと把握しておくことです。
明らかな異常値もあれば、判断に迷うような細かな変化もあります。

バイタルチェックの目的は、身体状況に問題が無いかを数値から確認し、要介護者が健康的で穏やかな生活を続けられるようにすることです。
そのため、バイタルチェックを過信することなく、事前に状態の異常に気づくことができるよう、常に一人一人の体調を気にかけて見ていくようにしましょう。

利用者への配慮を忘れない

バイタルチェックは日々行う必要があるため、利用者が嫌がることがないように配慮を忘れてはいけません。
たとえば、寝たきりの利用者に対していきなり測定を始めて驚かせてしまったり、一方的な態度で測定を行ったりすれば、今後の測定を嫌がる原因にもなり兼ねません。
測定する際には「測定の時間です」や「測定しても良いですか」などと声をかけてから、利用者の反応を見て行うようにしましょう。

測定は決まったタイミングで行う

バイタルチェックではデータの推移を見ることも目的に含まれるため、なるべく同じ条件で測定を行う必要があります。
毎日決められたタイミングや回数を守って測ることが大切であり、そのためにも事前にしっかりと準備しておきましょう。

体温計や血圧計などの測定器がそろっているか、測定データを記入する用紙はあるかなどを確認します。
測定を中断したり、測定データの記入ができないなどといったことがおきないように、事前準備をしておくことが大切です。

また、運動直後や入浴後、食後などは測定値にも影響が出ることがあるため、30分~1時間程度安静にしてから測定するようにしましょう。

利用者の表情や行動に気を付ける

バイタルチェックで確認する数値以外にも、利用者の様子がいつもと違っていないかなども観察します。
姿勢や食事の量などの目に見える変化は、何らかの体調不良のサインである可能性もあります。
高齢者は体調や病状が急変しやすいため、表情や行動から事前に不調を予測することもバイタルチェックを実施する上での注意点と言えるでしょう。

バイタルチェックは介護士が実施してもよい?

バイタルチェックは介護士が実施してもよい

結論から言うとバイタルチェックを介護士が行っても問題ありません。
以前は介護士による医療行為は認められていませんでしたが、介護の現場では医療行為に準ずる働きが必要なこともあり、介護現場における医療行為の基準が明確化されました。

下記は以前まで医療行為とされていたものですが、現在は医療行為に該当しないものの例です。

  • 体温計を用いた腋下などでの体温測定
  • 自動血圧測定器を用いた血圧測定(水銀血圧計は不可)
  • 酸素濃度測定器の装着
  • ガーゼ交換を含む軽微な切り傷や擦り傷、やけど等の処置
  • 湿布の貼付
  • 軟膏塗布(床ずれの処置は不可)
  • 点眼
  • 服薬介助
  • 坐薬の挿入
  • 鼻腔粘膜への薬剤噴霧の介助

下記は医療行為とされているものの、規制対象外として介護士が行って良いものの例です。

  • 耳垢の除去(耳垢塞栓の除去は不可)
  • 爪切り、爪やすり
  • 歯ブラシや綿棒を用いた口腔のケア(歯、口腔粘膜、舌など)
  • ストーマのパウチにたまった排泄物の廃棄
  • 自己導尿の補助におけるカテーテル交換時の準備、体位補助
  • 市販の浣腸器を用いた浣腸

ただし、これらの行為は利用者の状態によっては医療行為とされることもあり、また利用者やそのご家族の同意や、医師や看護師の指示が必要になる場合もありますので注意しましょう。

おわりに

バイタルチェックについて、改めて確認していきました。
現在はバイタルチェックを介護士が実施しても問題ありませんが、場合によっては医療行為とみなされるものもあります。

基礎的な業務の一つである「バイタルチェック」については、ほとんどの方が既にしっかりとした知識を持っていて、改めて学び直すということも少ないのではないでしょうか。
だからこそ、こちらの記事を通して、改めてバイタルチェックについて復習する機会としてみてください。

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