介護 2022.11.07

【介護】認知症ケアで重要なユマニチュードについて解説

重要なユマニチュード

ユマニチュードという認知症のケア技法についてご存知でしょうか。
日本でも2010年代から注目され、認知症ケアに重要な考え方であることから、ユマニチュードをすでに導入している施設もあります。
本記事では、ユマニチュードとはどういったもので、どのような効果が期待できるのかについてご紹介します。

ユマニチュードとは

ユマニチュードとは

ユマニチュードとは、高齢者や認知症を患っている患者に対して行う、フランス発祥の認知症のケア技法です。
「介護する人とは何か」、「人とは何か」といった哲学的な考えと、言語と言語以外の表情や視線、身振りなどによるコミュニケーション方法に基づいて、介護を行っていきます。

ユマニチュードはイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティという、二人の体育学の専門家により開発されました。
1979年に初めて場に赴き、それから現在までに数多くの失敗を重ねて築かれた技法です。
既に複数国の医療や介護施設で取り入れられている技法で、日本でも2010年代に注目されはじめ、導入する施設も増えてきています。
2019年7月には一般社団法人 日本ユマニチュード学会が設立されたように、新しいケア技法として引き続き注目を浴びていると言えるでしょう。

ユマニチュードの効果

同じケアを行っても、その効果は人それぞれではないでしょうか。
また、認知症を患っている利用者に対して介護を行う場合、介護職員に対して攻撃的な言動が出ることもあり、介護が困難になることがあります。

ユマニチュードを実践することで、利用者が安心して介護を受け入れたり、介護職員も介護をしやすくなったりと関係性の改善が見られるようになります。
また、認知症介護はあまりの過酷さから、介護職員の中には休職や退職をしてしまったりすることもありますが、ユマニチュードを取り入れて働く環境が良くなることで、離職率の低下につながることもあります。

このような効果が得られるユマニチュードを取り入れることは決して難しいという訳ではありません。
認知症を患っている方の反応がときに大きく変化することから、ユマニチュードは魔法や奇跡のようだと称されることもありますが、介護の基本とも言える、「見る」「話す」「触れる」「立つ」といった4つの柱をしっかりと理解して行動に移すことで効果が見えてくるきちんとした技術に裏付けされた技法なのです。

ユマニチュードにおける4つの柱

ユマニチュードにおける4つの柱

ユマニチュードにおける4つの柱とは、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの基本的なケア技術のことを指し、実践することで利用者に対して「あなたを大切に思っている」という気持ちを伝えることを目的としています。

認知症の利用者を介護していく上で、言葉だけでは相手を思っている気持ちは伝わりづらいと言えるでしょう。
ユマニチュードの4つの柱を取り入れて、相手に自分の気持ちをしっかりと理解してもらえるよう伝えることが大切です。
実際にユマニチュードの4つの柱とはどういったものなのかご紹介していきます。

見る

介護をするときの「見る」には、コミュニケーションを行う上でとても大切な役割を持っています。
介護を行う際は、利用者が座った状態や寝た状態で行う場面が多い傾向にありますが、その時に意識はしていなくても、相手を見下ろすような目線になってしまうことがあります。
ユマニチュードの「あなたを大切に思っている」とは程遠い行為にも見えてしまうでしょう。

上から見下されることは、利用者にとっても良い印象を受けづらいため、ユマニチュードでは相手の目線の高さに合わせたり、近くから見たり、正面から見たりすることで、平等であることや信頼感を伝えるように接します。
目線の高さは平等さを、近くで見ることは親しみやすさを、正面から見ることは正直さや信頼感を伝えるといった意味を持つと言われています。

話す

話す

話すときは、内容をはじめ言葉遣いや声の大きさ、トーンによって伝わり方は大きく変わると感じている方もいらっしゃるかと思います。
介護職の現場では、「待ってください」や「動かないでください」といった言葉がついつい使われています。
場合によっては少し力強く言ってしまったり、言葉遣いも乱暴になってしまったりすることもあるでしょう。
こういった話し方は、相手にとっては命令をされているようにも感じてしまい、利用者に優しさが伝わりません。

話し方に気をつけようとするあまり何も言えなかったり、介護に集中しているときは無言になってしまったりすることもありますが、ユマニチュードでは無言にならないように取り組む方法として、自分の行動を実況中継のように伝えることを勧めています。
「体を起こしますね」「背中を流しますね」のように、自分の行動について話すことで無言状態になり辛くなります。
また、「気持ちいいですね」「さっぱりしましたね」のようにポジティブな言葉を使うようにすることで、口調も優しくなりやすく、「大切に思っている」ことを利用者に伝えやすくなります。

触れる

介護をする上で利用者に触れることを、避けて通ることはできません。
直接触れることで利用者にも自分の気持ちが伝わりやすくなってしまうため、特に気を付ける必要があります。

やさしくゆっくりと、なるべく面積を広くとって触れていくようにしたり、最初は鈍感な肩や背中から触れ、敏感な手や顔は慣れてきてから触れるようにしたりすることで、利用者が興奮することを抑えることができ、優しさも伝わりやすくなると言えます。

立つ

ユマニチュードは「立つ」ことを人間の尊厳として重視し、1日に20分は立つ時間を設けることで人間の「立つ」機能は維持されるとも考えられています。
この考え方に沿って、ユマニチュードを取り入れた介護では、歩行が可能な利用者には移動時に立ってもらうようにし、また、シャワーなどの際にも座ったままではなく立って行うようにしています。

ユマニチュードによるケアの5つのステップ

ケアの5つのステップ

ユマニチュードによるケアは以下の5つのステップで構成されています。

  1. 出会いの準備
  2. ケアの準備
  3. 知覚の連結
  4. 感情の固定
  5. 再会の約束

ステップ1の出会いの準備では、3回ノックして3秒返事を待つというのを2回繰り返し、それでも返事がない場合、もう1度ノックしてから入室します。
そうすることで、認知機能が低下している利用者の脳が人と合う準備ができるようになると言われています。

ステップ2のケアの準備では、これから何をするか利用者にすぐ伝えるのではなく、親しみやすい会話から入り、その流れでケアの提案をします。
もしも提案して3分以内に良い返事がもらえなかったら一旦諦めて、利用者の緊張感がほぐれたころにもう一度提案するようにします。

ステップ3の知覚の連結では、4つの柱である「見る」「話す」「触れる」の2つ以上を組み合わせて、大切に思っていることを伝え続けていきます。

ステップ4の感情の固定では、介護を気持ちよく受けられたという事実を利用者本人の記憶に残すために、ポジティブな言葉や態度で印象付けるようにします。

最後にステップ5の再会の約束で、また来ること、会えることを約束して、利用者に期待感を覚えてもらうことで、次に介護をする際にも受け入れてくれやすくなります。

おわりに

介護職として、認知症ケアで重要なユマニチュードについてご紹介しました。
ユマニチュードとは、「介護する人とは何か」「人とは何か」といった哲学的な考えや、言語と言語以外によるコミュニケーション方法に基づいて行われるフランス発祥の認知症のケア技法です。

ユマニチュードを導入することで、利用者が安心して介護を受け入れたり、介護職員も介護をしやすくなったりといった効果を得ることができ、また介護職員の離職率改善も期待することができます。
ユマニチュードの4つの柱と呼ばれる、見る、話す、触れる、立つといった基本的な技術を介護業務に取り入れてみましょう。

関連記事

会員登録がまだの方へ

  1. 転職エージェントからのスカウトが届く
  2. 非公開求人にもエントリーできる
  3. 転職サポートを受けられる

他にもさまざまなメリットが受けられます。まずはお気軽にご登録ください。

page top

あなたに合った
非公開求人を受け取る

非公開求人の
受取りはこちら
page toppage top