医療・介護業界におけるデジタル化の現状と課題

超高齢社会が進む日本において、医療・介護の現場でのデジタル化の推進は喫緊の課題となっています。
人材不足が深刻化する中、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)やAIの導入により業務効率化をはかる動きが広がりつつありますが、業界特有の障壁も存在します。
本コラムでは医療・介護業界におけるデジタル化の現状と課題を解説します。
医療・介護現場のデジタル化の現状
医療・介護業界のデジタル化は、業種や施設の規模によって格差が生じています。
医療機関では電子カルテの普及をはじめとして、比較的早くからデジタル化が進められてきました。
診療報酬改定により、オンライン資格確認やマイナ保険証の利用など制度面からもデジタル化が後押しされています。
一方、介護業界では医療機関と比較してデジタル化が遅れている傾向にあります。
特に中小規模の施設では、導入コストやデジタルリテラシーの問題から、積極的な投資に踏み切れていないケースが見られます。
デジタル化を阻む主な障壁
医療・介護現場でのデジタル化が進まない背景には、複数の障壁が存在します。
経営者・管理者の意識
医療・介護分野では、組織文化や経営方針が長期間にわたり維持される傾向にあります。
特に長年同じ手法で運営してきた施設では「これまでのやり方で十分」という考えが根強く、新しい技術への投資に消極的なケースが目立ちます。
また業界特有の専門性の高さから、他業種で実績のある革新的な経営手法や技術導入事例の情報収集が十分に行われていない状況も見受けられます。
導入・運用コストの問題
医療・介護向けのシステムや機器は専門性が高く、初期投資額が相応の規模となる傾向にあります。
特に介護ロボットなどの先進機器は、数百万円から数千万円規模の投資が必要となるケースも少なくありません。
また導入後の保守・運用コストやシステム更新費用なども含めると、中小規模の施設では大きな負担となります。
スタッフのデジタルリテラシー
医療・介護のスタッフは専門職としての高い技能を持つ一方で、業務システムやデジタルツールの活用については習熟度に個人差があり、組織的な研修体制の構築が重要な課題となっています。
また多忙な業務の中で新しいシステムを学ぶ時間を確保することも、大きな課題となっています。
デジタル化が加速する背景と要因
こうした障壁がある一方で、医療・介護現場のデジタル化を加速させる要因も存在します。
深刻化する人材不足
医療・介護業界では慢性的な人材不足が続いており、今後さらに深刻化すると予測されています。
限られた人的リソースで質の高いサービスを提供するためには業務の効率化が不可欠で、ICTやAIなどのデジタルソリューションの導入への関心が高まっています。
組織文化の変革と意識の進化
医療・介護分野では近年、先進的な施設を中心にデジタル技術の導入が進み、業務の効率化や受診者・利用者へのサービスの向上に対する意識が高まりつつあります。
特に地域医療連携や医療の質の向上を重視する施設では、ICTやAIなどのデジタル技術を積極的に活用した新たなサービスモデルの構築に取り組む事例が増加しています。
導入が進むデジタル技術の具体例
医療・介護現場では様々なデジタル技術の導入が進んでいます。
医療機関におけるデジタル技術
電子カルテシステムの高度化
単なる記録システムから、診療支援機能を備えたシステムへと進化しています。
医薬品の相互作用チェックやレセプト作成の効率化など、多機能化が進んでいます。
オンライン資格確認とマイナ保険証
受付業務の効率化だけではなく、過去の薬剤情報や健診データの閲覧が可能になり、診療の質の向上にも寄与しています。
介護現場におけるデジタル技術

業務支援システム
介護記録や請求業務の効率化をはかるシステムの導入が進んでいます。
スマートフォンやタブレットを活用したリアルタイムの記録により、業務の効率化と記録の質向上を実現しています。
介護ロボット
移乗支援や入浴支援など、身体的負担の大きい業務をサポートするロボットの導入が始まっています。
装着型のパワーアシストスーツのように、介護スタッフの負担を軽減するための機器も実用化されています。
デジタル化時代のキャリア戦略
医療・介護現場のデジタル化が進む中で、求められる人材像も変化しています。
今後のキャリア形成に向けたポイントを解説します。
求められる新たなスキルセット
デジタルリテラシーの向上
基本的なパソコンスキルに加えて、電子カルテや介護記録システムなどの専門的なシステムの操作や基礎的なデータ分析能力が評価されるようになっています。
特に医療事務では電子カルテやレセプトコンピュータの操作に加えて、オンライン資格確認システムなどの新たな技術への対応力が求められています。
デジタル技術と専門知識の融合
ITスキルだけではなく、医療または介護の専門知識と組み合わせた複合的なスキルが評価されています。
医療データの分析や活用ができる人材、医療事務と電子カルテ管理の両方に精通した人材などの需要が高まっています。
転職市場でのアピールポイント
履歴書や職務経歴書に使用経験のあるシステム名を具体的に記載することが効果的です。
電子カルテであれば「○○システム3年以上の使用経験あり」など、定量的な実績を示すことがポイントとなります。
システム導入や運用改善に関わった経験は、大きなアピールポイントとなります。
今後の展望

医療・介護現場のデジタル化は、今後さらに加速することが予想されます。
人口動態の変化や社会保障制度の変革を背景に、効率的かつ質の高いサービス提供モデルへの転換が求められています。
こうした潮流の中、デジタル技術を活用した新たなケア提供体制の構築と、それを支える人材の育成が重要な課題となっています。
デジタル化の展望
業務効率化と質の向上の両立
単なる省力化だけではなく、サービスの質を向上させるデジタル技術の活用が広がります。
AIによる異常検知や予測分析など、先進的な技術の実用化が進むと予想されます。
多職種連携の強化
医療・介護・福祉の連携を強化する、デジタルプラットフォームの整備が進みます。
地域包括ケアシステムを支える、情報基盤としてのデジタル技術の重要性が高まります。
医療・介護分野におけるデジタル化とキャリアの展望
医療・介護現場のデジタル化は、人材不足の深刻化と制度面からの後押しを背景に今後さらに加速していくことが予想されます。
現状ではデジタルリテラシーや導入コストなどの課題がありますが、技術の進化と普及によりこれらの障壁は徐々に低減していくことが期待されています。
今後キャリアアップを目指す方は、時代の変化を見据えたスキルアップが重要となります。
デジタルリテラシーの向上、専門知識との融合、業務改善の提案力など、複合的な能力を身につけることでキャリアの可能性が広がるでしょう。
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