介護福祉士国家試験の合格率について
介護福祉士国家試験は、介護福祉士として働くために必要な知識と技術を有しているかを確認する試験です。本コラムでは介護福祉士国家試験の合格率について詳しく解説すると共に、「第36回(2024年)介護福祉士国家試験」の結果もお伝えします。
介護福祉士国家試験の概要
介護福祉士国家試験は、筆記試験と実技試験の2つで構成されています。筆記試験は11科目群の合計125問で、1問1点の配点となっています。合格基準は60%程度の正解率とされています。一方、実技試験は筆記試験に合格した場合にのみ受験することができ、100点満点で60%程度の正解率が合格基準となっています。
ただし筆記試験と実技試験の問題の難易度によって点数が補正されるため、毎年の合格基準点は変動します。
過去5年間の合格率の推移
厚生労働省の「介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」によると、過去の合格率は以下のように推移しています。
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第35回(2023年) | 79,151人 | 66,711人 | 84.3% |
第34回(2022年) | 83,082人 | 60,099人 | 72.3% |
第33回(2021年) | 84,483人 | 59,975人 | 71.0% |
第32回(2020年) | 84,032人 | 58,745人 | 69.9% |
第32回から第34回までは70%前後で推移していました。しかし第35回試験では初めて80%を超え、これまでで最も高い合格率を記録しました。
第36回(2024年)介護福祉士国家試験の結果
厚生労働省の発表によると、「第36回(2024年)介護福祉士国家試験」の結果は以下の通りです。
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第36回(2024年) | 74,595人 | 61,747人 | 82.8% |
合格基準点 | 筆記試験 | 実技試験 |
---|---|---|
67点 | 53.33点 |
介護福祉士国家試験の特徴
介護福祉士国家試験の筆記試験と実技試験の特徴を解説します。それぞれ介護福祉士として働くために必要な知識と技術を有しているかを確認する重要な試験となります。
筆記試験
筆記試験では医学、法律、心理学などの幅広い分野から出題があり、介護福祉士として働く上で必要となる基礎的な知識が問われます。問題形式はすべて選択式ですが「最も適切なものを選べ」「誤っているものを選べ」など、様々な指示文が用いられます。各問題の指示を正確に理解し、求められる選択肢を的確に選ぶことが重要です。
筆記試験対策では、介護福祉士の業務に関連する幅広い知識を身に付けることが重要です。テキストやオンライン学習教材などを活用して、体系的に学習を進めましょう。また模擬試験を受けることで、出題傾向の理解と時間配分の練習ができます。
さらに日頃の介護業務で得られる経験や知識は、筆記試験対策に大きく役立ちます。現場で学んだことを整理して、試験の出題範囲と関連付けて理解を深めることが合格への近道です。
実技試験
実技試験の出題内容は毎年変化しますが、いずれも介護現場を反映した実践的な問題が中心です。例えば「片麻痺の要介護者の体位変換」「車椅子からベッドへの移乗介助」「着脱の援助」など、日常的な介護場面を想定した課題が出題されます。
受験者は提示された状況を正確に把握し、要介護者の状態に合わせた適切な介助を選択・実施する必要があります。介助の手順、安全面への配慮、コミュニケーションの取り方などが評価のポイントとなります。
実技試験対策では、介護技術の確実な習得と様々な場面を想定した練習が重要です。介助の基本動作を反復練習して、的確な判断力と臨機応変な対応力を養いましょう。
介護福祉士国家試験の受験ルート
介護福祉士国家試験の受験資格を得るルートとして、次の4つがあります。最も一般的なのは「実務経験ルート」で、介護福祉士国家試験受験者の大半がこのルートを経て受験資格を取得しています。
実務経験ルート
実務経験ルートでは介護現場で3年以上の実務経験を積み、「介護福祉士実務者研修」または「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引等研修」を修了することが受験の要件となります。実務経験の期間は対象となる施設や職種での従業期間が3年(1,095日)以上、かつ実際の従事日数が540日以上であることが条件です。
現場で培った経験を活かして介護福祉士の資格が取得できる実践的なルートと言えます。
養成施設ルート
厚生労働大臣に指定された四年制大学、短期大学、専門学校などで所定の課程を修了することで受験資格が得られるルートです。養成施設での学習期間は普通科の高等学校卒業者は2年以上、福祉系大学や社会福祉士・保育士養成施設の卒業者は1年以上となっています。
福祉系高校ルート
福祉系の高等学校で必要な課程を修了することで、介護福祉士国家試験の受験資格が得られるルートです。ただし年度によってカリキュラムが異なるため、実技試験の免除条件などを確認する必要があります。
経済連携協定(EPA)ルート
インドネシア、フィリピン、ベトナムからの外国人が経済連携協定に基づいて来日し、指定の研修を受けながら3年以上の実務経験を積むことで日本の介護福祉士資格の取得を目指すルートです。
介護福祉士国家試験の実技試験免除条件
介護福祉士国家試験の実技試験は一定の条件を満たしている場合、免除されることがあります。実技試験の免除条件は資格取得ルートによって異なります。
実務経験ルートの場合
実務経験ルートの場合、「介護福祉士実務者研修」または「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引等研修」の両方を修了することで実技試験が免除されます。
養成施設ルートの場合
養成施設ルートでは、原則として実技試験が免除されます。さらに2021年度末までに養成施設を卒業した場合、介護福祉士国家試験に合格していなくても卒業後5年間の期限付きで介護福祉士として働くことができます。
この5年間に国家試験に合格するか、継続して5年間介護業務に従事すれば期限終了後も介護福祉士の登録を維持できます。
福祉系高校ルートの場合
福祉系高校ルートについては、2009年度以降に入学して新カリキュラムを履修した人は実技試験が免除されます。ただしカリキュラムの内容によって条件が異なる場合があるので、注意が必要です。
経済連携協定(EPA)ルートの場合
経済連携協定(EPA)ルートでは、「介護技術講習」または「介護福祉士実務者研修」を受講し修了することが実技試験免除の条件となります。
国家試験合格後の手続き
介護福祉士国家試験に合格しても、すぐに「介護福祉士」を名乗ることはできません。合格後、正式に介護福祉士としての資格を取得するためにはいくつかの手続きが必要です。
実務経験ルートで受験した人は、受験資格である3年以上の実務経験を証明する書類を提出しなければなりません。受験申込時は「見込み」で申し込むことができますが、合格後は速やかに実務経験を証明する書類を提出する必要があります。
提出期限までに書類が提出されない場合、合格は無効となってしまいます。合格発表後すぐに提出できるよう、事前の準備が重要です。
次に、すべての合格者が行う手続きが「資格登録」です。資格登録とは、介護福祉士としての資格条件を満たしていることを国に証明してもらうための手続きです。資格登録に期限はありませんが、この手続きが完了し登録証の交付を受けて初めて「介護福祉士」という名称が使用できます。
専門職としてのキャリアをスタート
介護福祉士の資格を取得することで、介護の現場で専門職としてのキャリアをスタートさせることができます。介護福祉士は高齢者や障害者の尊厳を守り、その人らしい生活を支援する重要な役割を担っています。資格取得後も定期的な研修や自己学習を通じて知識とスキルを磨き、質の高い介護サービスの提供に努めることが求められます。
介護福祉士はやりがいと責任のある仕事です。国家試験合格を目指す皆様が、介護の専門職として活躍されることを心から願っております。
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